飲食店を開店させる場合、行った方がよいのはお世話になった人や、開店後来店が予測される見込み客の人へ挨拶状を送って、開店を告知することです。ただし単に作ればよいのではなく、その際には押さえておきたいポイントがあります。そこでここでは、挨拶状の内容と、作成上の注意点、および活用のポイントについて解説します。
飲食店開店時の挨拶状とは
冒頭も少し触れましたが、挨拶状は何のために出すのでしょうか。その目的は3つあります。
挨拶状の目的は3つ
開店の告知
1つは当然のことですが、新たに店をオープンしたということを幅広く告知することです。飲食店の営業時間は限られていますから、開店しただけで告知しないと、閉めている時間しか近くを通らない場合、開店を知らないまま過ぎてしまうことも多いのです。それを避けるために、しっかりと告知しましょう。
開店に際しお世話になったお礼
どのような商売でも多くの人に支えられてお店は存在します。経営者はそれらの人に対して常に感謝の気持ちを持っていなければなりません。挨拶状は、開店までにお世話になって人たちに対して、そのような感謝の気持ちを改めて伝える目的もあります。
販売促進
そして、シビアな話として開店の挨拶状を送ることによって、売上貢献を果たすということが実は大きな目的です。つまり開店を告知し、そして来店へのモチベーションを多くの人に与える、ということです。特にオープン時は開店景気で多くの人が訪れる可能性がありますが、その波が去れば必ず閑古鳥が鳴く時があります。そのような時に、来店してもらえるような仕掛けを挨拶状でしておくのです。
どんな人に挨拶状を出したらよいの?
挨拶状には以上のような目的があるので、送る対象も当然その目的に沿った人たちになります。
すべての知り合い
まず飲食店のような商売の場合は、その店の存在を知られてからがスタートになります。ですから、自分の知り合いには全員挨拶状を送るようにしましょう。それは例えば年賀状を交換している人もですし、あるいはFacebookで友達になっている人もです。より幅広く告知するためには、卒業名簿に載っている人すべての人に送ってもよいほどです。
開店に関する関係者
また開店においてお世話になった人としては、不動産会社、内装会社、什器備品会社、食材やドリンクの仕入れ先、備品や消耗品の仕入れ先、物件のオーナーなど開店までに関わった人すべてが入ります。ですから名刺交換した場合は、その名刺をなくさないようにして、挨拶状を送るリストに加えましょう。
顧客の候補者
さらに今後自店舗の顧客になってくれそうな人にもすべて送ります。例えばここまでに勤めてきた飲食店で知り合った顧客、あるいは自分の友人、先輩、後輩などがそれです。それらの人は自分の本心から挨拶をしたい人ではなかったとしても、今後顧客になってくれるかもしれませんから、しっかり送りましょう。
挨拶状の例文4種
また挨拶状といっても送ったことがない人にとっては、どのような文面にしたらよいのかわからないのも現実です。そこで以下、挨拶状の例文をパターン別に4つご紹介します。
開店案内とパーティの招待状1
以下は開店の案内と、開店に際しオープンパーティを行う予定の時に、その招待を兼ねて挨拶状を送る場合の例文です。
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拝啓
××の候、ますますご繁栄のこととお慶びいたします。
さて、今回、かねてから準備してきました、焼き肉店「カルビ本舗」を来る×月×日に開店することとなりました。
これも一重に、多くの皆様のご支援、ご指導があってのことと篤く御礼いたします。
つきましては、開店のご挨拶と、ご厚情に感謝する意味を含めまして、以下の通り、ささやかがら開店披露パーティを催したく存じます。皆様方におかれましてはお忙しいとは存じますが、ぜひお時間をお繰り合わせていただき、ご来店いただければこれに勝る喜びはありません。 ぜひご来店をお待ちしております。
敬具
記
日時×月×日(日)午後13:00
場所 当店(焼肉王国)にて
住所、連絡先 ××市××町x-x-x 電話xxx-xxxx-xxxx
平成×年×月吉日
以上
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開店案内とパーティの招待状2
もう1つ同じシチュエーションでの例文をご紹介します。
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拝啓
皆様方におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。私××は、この度留学先のフランスより帰国し、念願のフレンチレストラン「ソフィア」を開店する運びとなりました。これも多くの皆様からご支援、ご指導いただけたからだと心より感謝しております。 つきましては、ご指導、お引き立ていただいた皆様に、自店舗の披露方々、感謝のパーティを以下の通り開きたく存じまず。
お忙しい中大変恐縮ですが、ぜひ万障お繰り合わせの上、ご来店いただきたく、お願い並びにご案内いたします。
敬具
記
日時 ×月×日(日)午後13:00
場所 当店(フレンチレストラン「ソフィア」にて
住所、連絡先 ××市××町x-x-x 電話xxx-xxxx-xxxx
平成×年×月吉日
レストラン 「ソフィア」店主 ××太郎
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開店案内のみの挨拶状
パーティを行わない場合、あるいはパーティには招待しないが、開店だけは告知する場合の挨拶文です。
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謹啓
××の候、皆様方におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素は弊社に格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
さてこの度かねて準備をしてきました、弊社チェーン「居酒屋太郎」の本町店を開店する運びとなりました。これも一重に常々皆様方からご厚情をいただけた賜物と篤く御礼いたします。
つきましては、お忙しい中誠に恐縮ですが、お時間のある時にでもご来店いただきたくご案内いたします。ご来店いただけた折には、はなはだ簡便ですがお礼のスイーツもご用意しておりますので、ぜひお知り合いともどもご来店いただければこれに勝る光栄はありません。
はなはだ失礼ですが、まずは書面をもって開店のご挨拶をさせていただきます。
謹白
記
開店日 ×年×月×日 17:00
場所 東京都××区××町1-2-3 Tel:XXX-XXXX-XXXX
JR ××駅 東口徒歩1分
お問い合わせ 株式会社XXX 担当:ぶけなび XXX-XXXX-XXXX E-mail bukenavi@bukenavi.com
ー・ー・-・-・-・-・-・ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ー・-・-・-・-・-・-・-
挨拶のみの挨拶状
同じパターンの挨拶文をもう1つご紹介します。
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拝啓
××の候、皆様方におかれましてはますますご隆盛のことと心よりお慶び申し上げます。
さて、 かねてご案内しておりました、当社チェーン「居酒屋太郎」本町店が来る×月×日オープンする運びとなりました。まずは書面にて、オープンのご案内をさせていただきます。
これも皆様方に普段よりご指導、ご鞭撻いただけたお陰だと深く感謝いたします。
今後も皆様に愛される居酒屋チェーンの展開によってそのご厚情に報いていく所存です。なお一層のご愛顧。ご指導を賜れれば誠に幸甚です。
ぜひお近くにお寄りの際にはご来店いただきたく、お願い申し上げます。
敬具
記
開店日 ×年×月×日 17:00
場所 東京都××区××町1-2-3 Tel:XX-XXXX-XXXX
JR ××駅 東口徒歩1分
お問い合わせ 株式会社XXX 担当:ぶけなび XXX-XXXX-XXXX E-mail bukenavi@bukenavi.com
ー・ー・-・-・-・-・-・ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ー・-・-・-・-・-・-・-
挨拶状で良く使うキーワード
以上をベースに文言を自店舗用に置き換えれば挨拶文はたやすく作れるはずです。またなかなかこのような文面の作成の機会がない人のために、このような時によく使うキーワードもご紹介しておきます。
冒頭の挨拶キーワード
ご挨拶/拝啓/慶び/格別/支援/清祥/お引き立て/お世話
開店を伝えるキーワード
オープン/開業/運び
感謝を伝え、来店につなげるキーワード
皆様/お客様/感謝/恐縮/愛顧/御礼/日頃/指導
開店パーティに関するキーワード
プレ/招待/お願い/店舗/案内/来店/開催/記/友人/所存/用意
プレオープン、グランドオープンを使い分ける
またオープンのパーティを開催するのであれば、プレオープンとグランドオープンの2回行いましょう。なぜかというと、オープンまでに必要な課題解決が、2回パーティを行うことによってクリアになるからです。その課題と解決とは以下のような内容です。
プレオープンパーティでオペレーションの確認を行う
飲食店はオープンしてしまうとすべてが本番です。その時の来店客はすべて売上につながる人たちですから、食事に満足して再来店を促す必要があります。したがって失敗は許されません。
とはいえ、実際にはオープンした段階で初めてわかる問題点などもあるのが事実です。特にオペレーションは、実際に運営してみないとそれがスムーズにできるかどうかはなかなか事前のシミュレーションではわかりません。
そこで開店前にプレオープンパーティを行い、本番さながらの体制で、実際に営業した場合でもオペレーションがうまくいくかどうかを確認するのです。あるいは、問題点はこの時にすべてあぶり出し、本番前に解決させておくのです。
ですから、プレオープンは、失敗してもある意味許してくれる人たちを招いて、本番を想定して、オペレーション、仕込み、調理手順などを実施し、不具合や想定外の部分を抽出して、開店前にそれらを修正しましょう。当然代金はいただきません。
グランドオープンで常連客を作り出す
これに対してグランドオープンは一般の人たちに対して、実際に来店してもらい、代金をいただいてサービスを行うパーティです。
ですから通常は、折り込みチラシなども配布して幅広く来店を促します。そして来店記念のキャンペーンなども行い、できるだけ多くの人に来店してもらうようにします。
その意味でグランドオープンはすでに本番ですから、プレオープンのように失敗することは許されません。ここで来店客にしっかり満足してもらって、自店舗の常連客にしていくことが目的になります。ですから、将来の常連客作りのために、来店記念品やサービスメニューを用意しましょう。
お客様の開店失敗事例
しかし中には以上のようなステップを踏まずにオープンしてしまい、スタート段階でつまずく店があるのもまた事実です。
たとえばお客様の中にはこのような失敗をしてしまった例もあります。
ある居酒屋が開店に際してオープンキャンペーンを行ったところ、思った以上に反響があり、想定以上の来店客がオープン日に押し寄せてしまいました。そこまでの想定はなかったので、ウェイティングが発生し、せっかく来ていただいた来店客が入店まで1時間待つ、というような状況です。当然、オペレーションもうまく回らないので、オーダーテイクにも、キャリーにも時間がかかり、到底来店客に満足させるレベルのサービスは提供できませんでした。それどころか用意した食材も切れる寸前でした。
キャンペーンにはそれなりに費用を投下しましたが、これでは自分でお金をかけて不満足客を量産してしまうだけの結果となり、悪い口コミも発生し、その後なかなか客足が伸びないということを招いてしまいました。
以上のようなことが起こらないように、プレオープンでしっかりオペレーションを熟成させ、グランドオープン時には来ていただいた来店客全員に満足してもらい、再来店の動機づけがかけられるようにしましょう。
開店を成功させるためのポイント
ではプレオープンとグランドオープンをしっかり成功させるためには何がポイントか、ということを解説します。
プレオープンは本番と同様に行う
プレオープンは本番のシミュレーションですから、入店からサービス、そして退店まで全く本番と同じように行う必要があります。具体的には以下の点に注意しましょう。
スタッフはメインを中心に通常通りシフトインさせる
スタッフはキッチンもホールも、メインとなる人材を中心に、プレオープンへの出席者に対して通常シフトインさせる人数を入れましょう。実際にはそこまでシフトインさせないが、パーティだから多めにシフトインさせた、というのではシミュレーションになりませんから要注意です。
食材は多めに仕入れる
ただし、食材に関しては多めに入れておきましょう。品切れでオペレーションの確認が取れなくなるのは本末転倒だからです。
オーダーは通常通りいただく
また代金はいただきませんが、招待客には普通に来店したと思って、入店から着席、オーダーまでしてもらいます。そうしなければシミュレーションにならないからです。
プレオープンは問題点を抽出することが目的なので、できるだけ本番さながらの体制で行いましょう。
グランドオープンは「感謝」と「販売促進」につもりで参加者に満足を
これに対してグランドオープンは、特別態勢で臨みます。目的は来店客全員に満足して帰ってもらい、2回目以降の来店やよい口コミにつなげる、という、1つの販売促進です。ですから絶対に失敗しないように十分な態勢と、十分な準備で行いましょう。
メニューは決めておく
グランドオープン時には、メニューを絞り、「開店特別プラン」などだけにした方がよいでしょう。その方がキッチンもホールもオペレーションがしやすいからです。
スタッフのシフトイン、仕入れは潤沢にする
またシフトインさせるスタッフもこの日だけは人数が余るくらい潤沢に入れましょう。間違っても、人数が足りなくてオペレーションに支障をきたすようなことがあってはなりません。
事前に仕込めるものは仕込んでおく
また開店プランを決めておけば、だいたいの想定で事前の仕込みもできます。できるだけ素早く提供できるように、事前準備をしっかり行いましょう。
記念品を用意する
また来店者には印象に残って、自店舗への好感につながるような記念品を渡すとよいでしょう。
友人の同伴を推奨する
折り込みチラシやDMによる案内状などで集客を行う場合は、1により2人、2人より3人の来店を促すようにします。たとえば、3人以上の来店には特別サービスがある、あるいは友達同士の来店に対してキャンペーンがある、などの販売促進を組んで、できるだけ多くの人が来店してくれるように仕向けましょう。
バーティ以外の日の来店にキャンペーンを付ける
また、グランドオープン日には予定があって来られないが、新店舗には興味がある、という人も中にはいます。そういう人のために、案内状にはパーティ以外の日の来店でもサービスがあるようにキャンペーンを実施しましょう。
本番来店のフックをかける
そして退店時には、次回利用できるような割引券を会計で配布し、2回目以降の本番の来店につなげるというようなフックをかけることも重要です。
まとめ
いかがですか。 飲食店がオープンするということは、消費者にとって最もインパクトのあるニュースであり、最も販促効果の高いイベントです。ですからこの機会をうまく利用して、滞りなく離陸させ、店を軌道に乗せられるように作戦を立てることが重要です。挨拶状も、プレオープンパーティもその一環だと考えましょう。