飲食店を開業するにあたって用意するものはたくさんありますが、どの店で必要なものがメニューブックでしょう。見やすくてきれいなメニューブックはそれだけで店のブランド力を引き上げてくれます。それだけではなく、しっかり考えて作られたメニューブックはお客様の注文をこちらに都合の良いようにコントロールできることをご存知ですか。それほどメニューブックは重要なのです。しかしそうなると、いったいメニューブック作成にいくら必要なのか不安になるかもしれません。そこでここでは、メニューブックの作成費用とはいくらくらいなのかということを具体的に解説します。
メニューブックのデザイン料金とは
メニューブックの作成費用は2つから構成されます。1つはデザイン料金、そしてもう1つが印刷、製本料金です。このうちより想像がつかないのがデザイン料金でしょう。そこでまずメニューブックのデザイン料金はどのような内容で、だいたい相場はいくらくらいなのかという点について解説します。
メニューブックのデザインだけを請け負っている会社に頼んだら
メニューブックのデザインを外注する場合、外注先の業者は2種類に分かれます。1つはメニューブックのデザインだけを請け負う会社、そしてもう1つはデザインから印刷、製本まで請け負う会社です。どちらの費用の方が高くなるということは一概には言えませんが、その費用の内訳が異なります。
そこでまずは、前者のメニューブックのデザインだけを請け負う会社に頼んだ場合の費用感をご紹介します。
メニューブックのデザイン料金は、基本的に1ページいくらという設定になっています。
相場は1ページ1万~2万円くらいでしょう。ただし、決まったパターンがない表紙や、おすすめ料理をプッシュするようなページは2万円、内容の構成が決まっていてそこにメニュー内容を流し込むだけのページの場合は1万円というのがだいたいの目安です。
またメニューに限らず、ブック形式の印刷物は、印刷をする場合、4ページを1枚の大きな紙に印刷たうえで裁断するので、4の倍数のページ数の方が紙の無駄が出ないため、1ページ当たりの印刷代が割安になります。つまり、メニューブックは、4ページ、8ページ、12ページ、16ページ、と言った方がよいのです。
ただし、4ページでは内容が薄くなるか、文字がぎっしりになって見にくくなるかのどちらかなので避けた方がよいでしょう。逆に16ページの場合は、お客様が料理を選ぶのに疲れてしまいます。ですから一般的には8ページか12ページで構成されることが多いです。
12ページ料理内容が収まり切れない場合は、ドリンクメニューだけを別のメニューにするという方法もあります。
以上がデザインだけの料金で、さらに料理の名称や、そこにつけるコピーもそのデザイン会社に頼んだ場合は、1ページ1万~2万円が加算されす。また料理の写真をメニューブックに入れるために撮影も依頼した場合は、高いデザイン会社で1品5,000円程度しますが、だいたいは品数ではなく、カメラマンの撮影に関する拘束時間で費用が決まり、それは相場で1時間2万~3万円程度です。
都度料理を作っては撮影する、ということにしてしまうとかなかなりの時間がかかってしまいますが、撮影までにすべての料理を作っておいて、一気に撮影する方法をとれば、2時間で50カットは撮影可能でしょう。
メニューブックのデザインだけを請け負う会社に頼んだ場合、かかる費用の内訳はだいたい以上で網羅できるはずです。
印刷からラミネート加工まで一括で請け負う会社に頼んだら
次に、デザインだけではなく、印刷からその印刷した紙のラミネート加工、そして製本まで請け負う会社に頼んだ場合の費用です。
その場合は2つの料金体系があります。
1つは上記のデザイン料金の体系はほぼ同じで、そこに印刷代が加わる場合です。これはメニューブックの大きさがB4なのかA4なのかによって紙代が変わりますし、またその紙の厚さなどの種類によっても変わってきます。さらにその印刷部数や、モノクロかカラーかによっても料金は変わってきます。
もう1つが、デザイン料金から印刷料金まで一括してワンプライスで請け負う会社です。
ここまでの情報で、一般的なメニューブック作成費用の金額を1つご紹介しておきましょう。
たとえばA4で12ページのメニューブックをカラーで10部作成する場合です。その場合内訳は以下のようになります。
- デザイン料 1ページ1万円
- ただし2ページは推奨料理を載せる凝ったデザインになるので2万円
- 料理名検討料金と、説明文のコピー料金が1ページ1万円
- 料理写真を2時間撮影して3万円
- 印刷代がカラー印刷の場合、紙代込みで1枚160円
- ここに企画デザイン費が3万円加わります
以上を合計すると、339,200円になります。
この金額はたとえば料理の名前と説明文を自分で考えれば安くなりますし、逆にデザインに凝ってページごとに違うデザインにすればデザイン料金が上がる料金が高くなります。したがって一概には言えませんが、ほぼこの程度の費用がメニューブックをすべて外注した場合にかかると考えてよいでしょう。
ただし金額を節約しようとして、料理写真の撮影は自分でするので、それを使ってほしいという飲食店経営者の方もいますが、それはやめた方がよいでしょう。素人が撮影して料理写真と、料理写真専門のプロカメラマンが撮影した料理写真は明らかにクオリティに差があります。お客様の多くは説明文を読まずに、料理写真がおいしそうかどうかで注文の判断をする傾向があるので、おいしく見えない料理写真は注文数のダウン、その結果顧客単価のダウンにつながります。ですから料理写真だけはお金がかかっても、プロに依頼したほうが、投資の見返りは得られます。
メニューブックができるまでの工程
以上がメニューブックのデザインと製本を外注した場合の費用感ですが、次にどのようなステップでメニューブックを作成するのかについて解説します。
1 店とメニューのコンセプトのヒアリング
まずしっかりしたデザイン会社は、メニューブックの作成を依頼すると、こちらのヒアリングを行います。それはどのようなメニューブックのデザインにしたいのかというだけではなく、そもそも自店舗のコンセプトは何なのか、顧客ターゲットはどのような層なのか、店の内装のテイストはどのようなものなのか、まで含んだヒアリングです。
ここを飛ばして、デザイン会社のサイトに載っている見本からデザインを選んで、電話やメールだけで請け負うようなデザイン会社は費用は安いでしょうが、仕上がりのクオリティは多くの場合満足できる水準にはなりませんから、注意が必要です。
2 現状メニューのABC分析
さらにデザイン会社は、どのようなメニュー構成にしたらより売上が上がるのか、という観点での提案までしてきます。そのためには、現状の料理の出庫数データを求められ、それによってABC分析などで、どの料理が利益に貢献し、どの料理があっても意味がないメニューなのかということを分析してきます。ここまでするデザイン会社は相当優秀で、頼りになると考えてよいでしょう。
3 見積もり
ここまでの情報があると、だいたいメニューが何ページになるのかという仕様がわかるので、概算の見積もりが出て来ます。その際には、総額の安い高いだけではなく、内訳をよく見て、分からないところは質問して、クオリティと金額のバランスで、発注するかどうかを決めましょう。
4 売りたい料理、売っていくべき料理の検討
正式に発注すると、さらに突っ込んだメニュー構成の検討と提案が行われます。それはどの料理を目玉にして集客し、どの料理で利益を稼ぎ、どの料理で顧客単価を上げるのかという、商品戦略、価格戦略そのものです。ここまで踏み込めるデザイン会社は飲食店の経営に関してかなりのプロですので、メニューブックを作成、改編することでの売上アップも期待できるでしょう。
5 ページネーションと正式見積もり
上記の検討によって、積極的に売っていく料理などが決まったら、それに応じてどのページにどの料理を載せるのか、という構成案が上がってきます。これをページネーションと言います。メニュー全体の設計図と言ってもよいでしょう。多くの場合はこの段階で正式な見積もりが上がってきます。
6 ページごとの戦略に沿ったレイアウトの設計
ページネーションがほぼ確定したら、今度は1つのページ内で。どの料理をどの位置に配置するか、写真はどの料理のどこに入れるか、というレイアウトの上がってきます。ページ内のレイアウトはどの料理が売れるか、つまり売上が上がるか、利益が出るかということに直結するので、非常に重要な部分です。
7 料理名と説明のコピーライティング
レイアウトが決まったら、そこにつける料理名と説明のコピーライティングが、そのレイアウトに記載する形で上がってきます。料理名や説明のコピーも売上には大きく影響するので、特に料理名についてはしっかり考えましょう。
8 撮影
以上でメニューのデザインはほぼ決定しますので、次にはそこに載せる料理写真の撮影です。この料理写真も、売上を大きく左右しますから、料理写真の経験が豊富で、おいしそうに料理が撮影できるカメラマンを選びましょう。選ぶうえでは、過去に撮影した料理写真を見せてもらうことが1番です。
9 デザイン起こし
以上のデータが揃ったら、やっとメニューブックのデザイン作成に入ります。
10 校正
デザインが上がってきたら、通常の場合まずPDFなどのデータで初稿が送られてきます。ここで、来店客の目線に立って、メニューは見やすいか、こちらの想定している料理を注文したくなるか、コピーの文字は間違っていないか、色合いはよいかという点などについて、しっかり確認しましょう。
校正は何度かやり取りをしますが、こちらで「OK」を出してしまったページはそれ以降の修正が利かないか、修正した場合別途料金がかかる可能性があるので、目を皿のようにして真剣に内容確認することをおすすめします。
11 印刷、納品
そして最終のデザインをOKしたら印刷です。この場合も色校正とい実際の紙に印刷した試し刷りが1回上がってきます。ここで注意したいのは、パソコンの画面で確認した色と実際に印刷した場合の色がかなり違う場合が多いことです。ですから色校正の段階で、料理がぱっと見でおいしそうに写っているかどうかを中心に確認しましょう。
そして色校正がOKになったら、印刷、製本に入り、出来上がったメニューブックが納品されます。
コスト削減するなら自作メニューブック
メニューブックの外注は上で記載したように数十万円かかることが一般的です。その費用がもったいない、あるいは用意できないという場合は、メニューブックを自作する方法もあります。
その際には以下の点に注意すれば、それなりのクオリティでメニューブックが作成できるはずです。
基本はパソコンで作る
基本はパソコンのWord、Powerpoint、Excelなどで作りましょう。その方が見栄えが良く、見やすいメニューができる可能性が高いです。ただし字に自信がある人、個性を出したい人の場合は自筆の筆文字やデザイン文字などでも作成してもよいでしょう。
料理のカテゴリーを考える
料理のカテゴリーも重要です。一般的には前菜、肉料理、魚料理と言ったカテゴリーで料理を分類していきますが、ここでもひと工夫しましょう。たとえば、最初のビールと一緒にまず頼む料理をまとめてスピードメニューとして分類したり、あるいは料理の安さが特徴の飲食店なら、価格帯別にカテゴリーでもよいでしょう。
ページネーションを考える
全体のページネーションも重要です。お客様はだいたいの場合メニューを1ページ目から見ていきますから、自店舗として売っていきたい料理を特集として最初のページに大きく載せるなどの工夫が必要です。
1ページ内のレイアウトをZ型で考える
ページネーションの次が1ページ内のレイアウトです。メニューを見る時のお客様の視点は、Z型に動きます。ですので、1ページ内で売れる料理は、左上か右下に配置されているものになります。その習性を利用して、売りたい料理は左上か右下に配置しましょう。
売りたい料理には料理説明もしっかりつける
売っていきたい料理は料理名と説明コピーもしっかり考える必要があります。特に料理名は、「朝どれキトキトお造りどどーんと盛り合わせ」などのように、その料理の特徴と、お客様にとって注文したほうがメリットがある内容にするのがベストです。
写真のレイアウトも考える
写真もメニューにおいては重要です。売りたい料理にはは必ず写真を、大きなサイズでつけましょう。
写真はとにかくきれいに撮る
料理写真はメニューの命です。見た瞬間に「おいしそう」と思わせなければ注文には至りません。ですから料理を撮影する際には、以下の点に気をつけましょう。
- 料理は自然光で撮影する。窓際のテーブルなどにおいて撮影を。
- 撮影した写真はそのまま載せず、おいしそうに見えるように色合いなどを調節する。無料の料理写真加工アプリを使うと便利。
全体の配色やデザインにもこだわる
また全体の配色にも注意が必要です。
まず大前提は、青などの寒色系を使うことはNGです。寒色は料理をまずく見せ、食欲を減退させる効果がありますので、必ず赤系、黄色系の暖色を使用しましょう。
さらにその上で、自店舗のコンセプトの合致した色合いを選べればよいでしょう。たとえば、イタリアンレストランの場合は、ビビッドなイタリアンカラーの赤や緑を使った配色にする、上品な日本料理店ならベージュ系や茶系で統一するなどです。あるいは店内の内装の色合いのトーンと合わせてもよいでしょう。
自分で作る自信がなければ
このようなメニュー作りに自信がない場合は、意外にスタッフの中に得意な人がいる場合も多いので呼び掛けてみましょう。あるいは友人、知人に協力してもらってもよいでしょう。
まとめ
いかがですか。
メニューブックは、単なる料理の紹介ツールではなく、実は最大の販促ツールです。ですから以上で解説した内容に沿ってよく検討しましょう。メニューブックを外注する場合も、ここで解説したステップでしっかりと本気で売れるメニュ-作ってくれるデザイン会社なのかをよく見極め、それと料金のバランスが取れているのかで、発注するかどうかを判断しましょう。