飲食店をこれから開業しようという人、あるいは今飲食店を経営していて業績が芳しくない人は、ぜひ看板についてもう1度考えてみてください。看板は単に店の名前を表示するだけのものではなく、使いようによっては集客効果も上がるほど重要な販促ツールなのです。そこでここでは店の顔ともいうべき看板の重要な役割の解説と、効果的な看板にするポイントをご紹介します。
こんなにも重要!看板をつける目的は?
まず最初に看板は何のために設置するかご存知ですか。実は看板の設置には以下のような目的があるのです。
自店舗の存在を認知させる
1つは当たり前のことですが、そこに自店舗が存在しているということを、その地区をよく知らない人に認知させることが看板の最大の目的です。これが当たり前のようですが意外と具現化されていません。たとえば読めないロゴの看板、よく読まないと飲食店だとわからない看板がその具現化できていない、目的を果たせていないものです。
店舗の特徴、コンセプト、名物料理を訴求する
看板は店舗所在を告知するツールであると同時に、使いようによっては非常に効果的な販促ツールにもなります。たとえば、看板で自店舗の料理やサービス、コンセプトなどの特徴をアピールしたり、自店舗がお客様に提供できるメリット、別名ベネフィットを訴求することができるのです。それは店名しか書いていない看板よりも、大きな集客効果があるでしょう。
看板の種類と役割
では看板にはどのような種類があって、それぞれどのような特徴と役割があるのでしょうか。
看板の種類と役割とは
壁面看板
壁面看板は、建物の側面の壁面に設置する看板です。外からライトで照らす外照式と、プラスチックで作成し中に蛍光灯を入れた内照式があります。役割は店舗の所在の告知と、ビルなどの場合の所在の階数を認知させることです。
屋上看板
屋上看板はその名の通りビルや高い建物の屋上に設置する看板です。屋上は全方向から見えますから、前後左右に表示面のある看板であれば、どこから見てもそこに自店舗があることを知らしめることができ、それが役割です。あるいは多店舗展開をしていたり、大型店舗の場合は、そこに自店舗がなくても広告の役割で設置する場合もあります。
袖看板
袖看板は、建物の壁面に取り付けて、路上の空中に突き出させる看板です。道路から直接見えるので、往路と復路の2方向に情報を発信できます。道路を歩いている通行人や、走っている車に乗っている人に、自店舗を認知させる役割です。
ポール看板
ポール看板は、店舗の敷地内で道路に面した場所に柱(ポール)を立て、その頂上に看板を設置したものです。これは100m先からも確認できるような非常に視認性の高いものです。ただしその分設置費用も高額になります。特に自動車に乗っている人への訴求が役割です。
懸垂幕
懸垂幕はポール看板の柱の側面に設置する、テント地や布で作った「旗」のような看板です。店舗名を表示するよりは、店舗の特徴や名物メニューを告知することが役割です。
スタンド看板
スタンド看板は店舗前の路上に設置する看板です。表示は通常両面に行います。中には内照式のものありますし、サイズもさまざまです。路上を歩く人への自店舗のアピールができるものなので、自店舗の存在だけではなく、看板メニューやランチメニューをアピールできる役割があります。
ウィンドウ看板
ウィンドウ看板は自店舗のガラス窓に貼りつける看板です。多くの場合は、1つの窓に1文字貼り付け、窓が並んでいることで1つの言葉にする形式をとります。形式は文字を切り抜いたシートの場合と、紙などに文字を印刷する場合があります。ガラス窓に貼るだけなので、手軽に空いている場所を販促利用することが役割です。
テント
テントとは店舗のエントランスに設置するテント地の日除けや雨よけの表面を看板利用したものです。看板の目的ではなくてもいずれにしても設置するので、何も記載しないと平面が無駄になります。そこで看板として利用するのが役割です。
ファサード看板
店のエントランスの上の部分をファザードと言い、ファサード看板とはその場所に設置する看板です。エントランスの真上なのでまさに自店舗の顔になります。店の特徴、得意メニュー、名物料理、ベネフィットをアピールすることが役割です。
のぼり
のぼりは店舗前に立てる簡易な布製の看板です。懸垂幕と同じく、店の位置の告知でなく、季節メニューや得意メニュー、あるいはキャンペーンをアピールをするのが役割です。
のれん
のれんはご存知のように店舗エントランスにかけるものですが、これもただの装飾ではなく、自店舗の特徴やベネフィットをアピールする看板の役割もあることを認識しましょう。意外にその点を見落としがちですが、実はのれんには自店舗の雰囲気を明確に伝える効果があるのです。ですから、上品なものにしたり、勢いのある字体にしたりして、店の特徴をアピールしましょう。
看板にはこのように販促効果がありますから、以上の種類のうち可能なものはすべて設置しましょう。ただし壁面看板では自店舗の特徴を載せ、袖看板では自店舗のベネフィットを表示し、ファザード看板では得意メニューを記載する、などのようにすべてが違う情報だと、情報量が多すぎて、かえって肝心なものが伝達できません。ですから情報を絞って、できる限り同じ情報をすべての看板に表示するようにすれば、非常に訴求力がアップするでしょう。
看板のデザインと内容
では以上の役割と種類の看板をどのようにのデザインしたらよいのか、そのポイントを解説します。
デザインのポイント
まずデザインのポイントは以下の通りです。
視認性がよいこと
最も重視すべきポイントは「視認性」を高めること、すなわち遠くからでも一目見れば店名と特徴が分かることです。
自店舗の立地が非常によく、人通りの多いところに看板を設置できれば、視認性がある程度悪くても、最終的に見てくれる人数は相対的に増えますから、その中から来店してくれるお客様も増えるでしょう。しかし、主要道路から1本入った立地や2階以上の空中店舗の場合は、店舗があることに気づく人の方が少ない場合や、そもそもそこを歩いている歩行者が少ない場合があるので、少ない対象者に「見てすぐわからせる」ことが重要です。
そのためには、自店舗の範囲で考えず、周囲の看板との差別化も考慮したほうがよいでしょう。いくら交通量が多くても、周囲の看板が黄色で、自店舗の看板も黄色では、周辺の風景に自店舗の看板が紛れてしまい、全く視認性が上がりません。そう言う立地の場合は、赤色の看板にするなど、周囲の看板とは全く異なった色にするような工夫が必要です。
自店舗のコンセプトや特徴と整合していること
看板のデザインは、自店舗の特徴やコンセプトの表現スペースでもあります。したがって特徴やコンセプトとデザインのテイストが整合しているほうが、よりアピール力が増します。たとえば、ベーカリーカフェなら食パンの形をした看板にする、新鮮な刺身が訴求点なら魚の形をした看板にする、イギリス式パブならロンドンの路地にありそうなアンティークなデザインの看板にする、などです。
看板の形のほか、表示する文字の字体も、居酒屋なら和風にする、店主の人柄が訴求点なら店主が書いたような豪快な筆文字にする、などの工夫も大切です。
素直に読める表記にすること
看板は販促ツールでもあるので、一読してすぐわかることが大切です。よく洋食系の飲食店でやりがちなのが、店名をフランス語などで表示することです。この方法は自店舗のコンセプトや特徴は伝えられますが、しかし多くの人は読めません。
読めなければそこにどのような飲食店があるのか認識できませんし、外見で気に入って予約の電話を入れたくても、電話口で店舗名を間違って伝えて恥をかくことを考えるとそれもしくくなり、集客効果が上がりません。
ですから、
Les Petite Chambre
ではなく
レ・プチ・シャンブル
とカタカナで書くか
Les Petite Chambre
レ・プチ・シャンブル
と上下の2段書きにするなど誰でもすぐに読めるようにしましょう。
内容のポイント
次に看板に記載する内容のポイントです。
料理の種類と特徴とアピールする
看板では、自店舗の料理の具体的なカテゴリーと特徴をアピールしましょう。たとえば、
- 「中華 珍明」ではなく「広東省特級厨房 珍明」にする
- 「らーめん ごっつあん」ではなく「焦がしニンニク 家系醤油らーめん ごっつあん」にする
自慢料理をアピールする
一押し料理や名料理を看板でアピールしてもよいでしょう。たとえば、
- 「Una Festa」を「生パスタ人気店 カジュアルイタリアン ウナ・フェスタ」にする
- 「La Verità」を「石窯ピッツァ専門店 ラ・ベリータ」にする
店名自体にインパクトをつけ記憶させること
また店名を保健所で営業許可を取った正式名称ではなく、アピール力のある情報を加えたインパクトのある表示にする方法もあります。たとえば、名古屋発祥の人気の手羽先専門店「世界のやまちゃん」がそれです。この店の正式店名は「やまちゃん」ですが、「世界の」を加え、店主の顔のイラストを入れたことによって。インパクトと料理の美味しさをアピールすることに成功したため、繁盛店になりました。
手作り看板
これらの看板は基本は販促会社や看板専門店に依頼して作成しますが、自作できるものもあります。
ウィンドウ看板の作り方
たとえばウィンドウ看板は簡単ですから、以下のような方法で自作してみましょう。その時の方法は、基本は「パソコンで文字を打って、それをプリンターで印刷し、ラミネートして貼り付ける」ことです。その際には単に店名ではなく、店主からのメッセージや得意料理、「鍋コース大幅値下げ!」などのキャンペーン内容でもOKです。
ただし、窓ガラスが多いとか、1つの窓ガラスに3文字ずつ入れられる、などの時に、情報を多くし過ぎると、結果的に何も伝わりません。情報は絞って、目立たせたい部分だけ表示するようなメリハリが必要です。また、文字の字体もおしゃれするなどして、店舗のおしゃれさを字体で伝える、というようなことも考えましょう。
さらに、必ず外部から自店舗の貼り付ける窓を見て、どの部分にどのように貼れば1番目立つかを確認しましょう。
スタンド看板は「AIDMA」に従って作成する
スタンド看板は地面にあるので、歩行者がじっくりと読んでくれる可能性があります。したがって視認性だけではなく、自店舗の特徴、ベネフィッ、メニュー内容などを加えてもよいでしょう。特にスタンド看板に黒板やホワイトボードがついていれば、それに毎回違う情報を載せて、歩行者にアピールすることが可能です。
その時には「AIDMA(アイドマ)」という広告の理論に則って、看板を作成しましょう。AIDMAとは以下の内容の頭文字です。
Attention(アテンション=注意を呼び起こす。「お!こんなところにこんな店が!」)
最初に歩行者の注意を引いて、ここに店がある、ということを認知させます。看板を内照式にしたり、インパクトのある字体にしたりしましょう。
Interest(インタレスト=興味、関心を持たせる。「こんな料理を出すんだ!」)
次に、看板に注意を喚起されてそれを読んだ歩行者に、自店舗の内容に対する興味を持たせます。
Desire(デザイア=食べたいを思わせる。「食べたいな!」)
興味を持たせたら、いよいよ入店させるため、「食べたい」という欲求を喚起します。「替え玉無料サービス中!」でも「熟成黒毛和牛ステーキ本日半額!」でもよいので、「食べたい」と思わせましょう。
Memory(メモリー=記憶させる。「でも今は急ぐから、今度この店に来よう!」)
ベストはそのまま入店させることですが、その人に別件の予定がつまっていたり、食事時ではない場合もあります。その時には、自店舗を記憶させ、機会を設けて来店する意識を持たせる必要があります。そのためには、看板にチラシやサービスチケットを設置し、持って行ってもらい、次の来店のフックをかけましょう。
Action(アクション=行動を誘引する。「忘れないように看板をスマホで撮影しておこう!」)
以上の部分がしっかりできていれば、高確率でその人は最後の行動、すなわち来店まで行うでしょう。少なくともその確率はかなり上がるはずです。
写真を使う
スタンド看板やファザード看板など、細かい部分まで視認できる看板の場合は、文字だけではなく写真も載せても、文字では伝えにくい、たとえば「おいしそう」「新鮮そう」などの情報が伝えられます。
費用はいくらくらいかかる?
看板を自作ではなく、専門業者に頼んだ場合、費用はどの程度かかるのでしょうか。それは文字のデザインを独特なものにしたり、イラストを入れたりすると、価格が高くなるなど、その記載情報によっても上下しますが、おおむね相場は以下のようなものです。
- 壁面看板 3万~5万円
- 袖看板 15万~20万円
- 懸垂幕 3万円(製作費のみ)
- スタンド看板 5万~10万円
- ウィンドウ看板 10万~15万円(業者製作の場合)
- ファサード看板 15万~20万円
- のぼり 1本5,000~1万円(既製品は2,000円程度)
- のれん 5万円~(大きさによる)
まとめ
いかがですか。
看板は単に店名を書くだけではもったいない、ということがお分かりいただけたでしょうか。看板はせっかく外部の人に対して情報発信できるものですから、上手に使えば有効な販促ツールになるのです。ぜひ以上を参考に、強烈に「お客様候補者」にアピールして、繁盛店を目指しましょう。