飲食店を持つ夢を抱く人は多く、その夢を実現して飲食店を開業する人も相当数います。その努力は非常に素晴らしいですが、しかし残念ながらそのうちの50%は開業後1年以内に廃業しています。つまり50%の飲食店は思ったように売上が伸びず、運転資金が底をついてしまうのです。
ですからせっかく開業した自分の飲食店を継続させるためには、よほどの趣味で経営していない限り、売上を上げることが必須命題です。しかし多くの飲食店経営者は、自分の飲食店がなぜ売上が上がらないのか理解していません。したがって対策も適切なものを打てないのです。そこでここでは、悩める飲食店経営者のために、飲食店の売上が上がらない理由とそれを解消する方策を7つ解説します。
1 顧客満足度を上げる
売上が上がらないのは客数不足
飲食店の売上を計算する式にはいろいろとありますが、どの商売にも共通する原則は以下の通りです。
売上=(新規客数+リピート客数)×顧客単価
つまり端的に言えば、客数が売上に直結しているということです。売上が上がらない原因はその客数が圧倒的に不足しているからです。それをさらに分解すれば、新規客が少ない、そしてそこからリピートするお客様も少ない、ということです。
売上=顧客満足度
ではなぜ客数が増えないのかというと、これも端的に言えば、「店の提供する価値が、お客様の期待を上回らない」からです。つまり顧客満足度が低いのです。
お客様は誰もが、新規の場合はまず一定の期待を持って来店します。その際に、自店舗の提供する料理、接客、内外装、価格などのあらゆる「価値」の総合計で、その期待を上回らないと、お客様は満足しません。満足しなければリピートしてくれません。
逆に満足したお客様は何か月後かにリピートしてくれます。その積み重ねが売上となります。
ですから、来店してくれたお客様に満足していただき、顧客満足度を上げていく努力をすることが、売上につながるのです。
2 リピート客を増やす
特に、商売を安定させる上で大切なのは、新規客以上にリピート客です。ですからリピート客が圧倒的に少ないことが、売上が上がらない最大の理由です。そのリピート客がなぜ増えないのか、ということをさらに解説しましょう。
なぜリピート客が大切なのか
上で挙げたように、客数は新規客とリピート客の合計です。そしてそのうち売上を支えてくれるのは、新規客ではなく、リピート客です。その理由は以下の通りです。
販売促進費がかからない
新規客の場合は、集客するうえで食べログを使ったり、新聞折り込みをしたりなどの、販売促進費用がかかりますが、リピート客の場合はその費用は全くかかりません。つまりそのリピートの売上から経費を引いたものは純粋に利益になります。
口コミや紹介で客数アップに貢献してくれる
そしてリピート時に再びお客様を満足させることができれば、さらにリピートが重なり、そのお客様は自店舗の「ファン」になって、今度は紹介や口コミなどでお客様を増やしてくれる存在になります。こうなるとまさにそのお客様は自店舗の財産です。
毎月安定した売上が予想できる
リピート客は自分の来店サイクルを持っています。Aさんは1か月に1回来店し、Bさんは3か月に1回来店するという具合です。そういうリピート客がいると、次月の売上予想がつきやすく、自店舗は毎月安定した売上を確保できるようになります。安定した売上を確保できれば、従業員もそれに合わせて雇用できますし、仕入れもしやすくなり、トータルで自店舗の経営が安定します。
以上のような理由で、リピート客をいかに増やすかが売上アップのポイントになるのです。
リピート客を増やす方法
まずは記憶に残るお店作りから始めましょう。印象の薄いお店になってしまっては何も始まりません。「インパクトある看板メニューを作る」「お客様の心を掴めるよう接客技術を磨く」など方法はさまざまです。自分のお店に合った施策を立てましょう。
3 回転率アップをはかる
売上を表すもう1つの公式は以下の通りです。
売上=座席数×埋まる席の割合(満席率)×1つのテーブルに何回来店客がつくか(回転率)×客単価
座席数は増やせませんから、自分の努力で上げられる数字は、満席率、すなわち上で挙げた顧客数と、回転率、そして客単価です。このうちのまずは回転率アップを図って売上をアップさせましょう。
とはいえ、自店舗がファストフード型の「さっと来てさっと食べてすぐ出る」タイプの飲食店ではなく、「雰囲気を楽しみながら歓談してゆっくりと食事を楽しむ」飲食店の場合もありますから、そのコンセプトを守りながら回転率を上げることが大切になります。
したがって、お客様に「早く食べてもらって、早く出てもらう」ことによって回転率を上げることはできません。つまり店舗への滞在時間をお客様に対する工夫で短くすることは考えない方がよいのです。
ではどの部分で、滞在時間を短くするかというと「スピード提供」しかありません。つまり、お客様が着席したらすぐにオーダーテイクに行き、注文された料理はできるだけ早く提供する、ということです。つまりお客様側の価値で言えば、「お待たせしない」ということです。
そのためにできることが、ホールのオペレーションをスムーズにすることと、何よりキッチンの作業の効率化です。
たとえば、食材をオーダーのたびに冷蔵庫から出していると調理の時間は長くなり、スピード提供できなくなります。その代りに、頻繁に出るメニューの食材は一定量を作業台に出しておけばその分時間が効率化できます。
あるいは、もっとシンプルなところで言えば、調味料を取りやすい位置にいつも配置することです。そのために、作業台にマーキングしていつも同じ場所に調味料を置くようにする、などです。
そのような工夫をすることでスピード提供を実現し、少しでもお客様の滞在時間を、顧客満足度を下げないまま短縮し、全体の回転率を上げましょう。
4 顧客単価をあげるための施策を
また店側でもう1つ工夫ができる数値が顧客単価です。
そのための方法は以下の通りです。
もう1品頼んでもらえるメニューを開発する
1つは、居酒屋における枝豆のように、着席したお客様がとりあえず1品頼む料理を開発したり、あるいは低価格のデザートを開発するなどの、通常のオーダーにプラス1品頼んでもらえるメニューを用意することです。
セットメニュー化する
また顧客単価を上げるよい方法はメニューをセット化することです。
たとえばランチの場合、アフターのドリンクを別料金にしておくと、頼むお客様はがくんと減ります。しかしこれを料理とドリンクのセットにして、単品を合計した価格よりも安いセットメニューにすることでオーダー率は格段に上がり、その分顧客単価を上げることができます。
これはドリンクに限らず、たとえば居酒屋で、ドリンク1杯と小皿料理2品の「ちょい飲みセット」などを開発するのでも同じことです。
1ランクアップした料理を提供する
あるいは通常提供しているメニューに対して、1ランク上のメニューを提供してもよいでしょう。たとえば蕎麦店などで、通常の二八のざるそばに対して、十割蕎麦を200円アップで提供したり、あるいは「朝どれ鮮魚の船盛」などのスペシャルなメニューを提供するなどです。そのスペシャルにする分の価格アップが、顧客単価を上げることにつながります。
料理の価格を見直す
さらに、料理の単価を見直すことも検討してもよいでしょう。ただし明確な値上げは顧客離れにつながりますから、メニューの改廃に合わせて行うことがベストです。その際に、たとえばハンバーガーの肉を国産牛から国産黒毛和牛に替えて、価格を20円アップさせる、などの方法で全体に顧客単価を上げるのです。
仕入れを見直す
また顧客単価を上げることではありませんが、その粗利を改善させることでも利益が上がるので、結果的に売上が上がったことと同じ効果が得られます。そのためには、仕入れ先を見直したり、ある程度の量が出て日持ちがする食材は安い時に多めに仕入れるなどの方法で、全体の粗利を改善させましょう。
オーダー時に一声かける
顧客単価を上げることはオーダーテイク時にもできます。それはオーダー時に「ドリンクはいかがですか」とか「こちらお客様に人気のメニューです」などのように、自店舗として推奨したい料理を一声お客様にかけるという方法です。ただし押し売りにならないように、セールストークを考え、それをホールスタッフに教育しましょう。
コンセプトに合致した顧客単価にとどめること
このような方法で顧客単価を上げることができますが、しかし顧客単価は上げればよいというものではありません。それには上限があります。簡単な例でいえば、1コインランチが評判で集客できている店が、顧客単価を上げることで、ランチの顧客単価が600円になったら、途端に人気がなくなってしまう、というようなことです。
つまり自店舗を選択してくれているターゲットのお客様の予算を考えて、その予算に合わせた最大上限の顧客単価までに顧客単価アップはしておかないと、客層が変わったり、集客力が落ちたりして、かえって売上が下がる可能性があるということです。
ですから自店舗の特徴、コンセプト、ターゲット客の自店舗選択理由と想定予算をよく考えて以上の方策は実行しましょう。
5 接客対応を向上させる
また飲食店がお客様に提供し、お客様が満足してくれる要素は「料理」のほかに「接客」と「空間」があります。ですからそのうちの接客内容のアップも、顧客満足度の上昇につながり、結果的に売上アップをもたらします。
そのためには、ホールスタッフの接客力向上が必須です。それを実現するためには、たとえば
- 接客マニュアルを作って研修で習得させる
- 個々のスタッフの接客力を評価して時給に反映させる
- ホールスタッフ同士で接客のアドバイスができるようなミーティングを行う
また来店時の挨拶1つをとっても、接客内容のアップが可能です。
来店時の挨拶を「やまびこ挨拶」つまり、ホールスタッフがあちこちで自分のタイミングでバラバラに「いらっしゃいませ」と挨拶をしても、お客様には自店舗の接客力の高さは印象付けられません。それに対して、全ホールスタッフ、あるいはキッチンスタッフも一緒になって、来店時に一斉に「いらっしゃいまぜ!」と挨拶できれば、それだけでお客様に強いインパクトを与えられ、顧客満足度のアップにつながります。
そのように個々のスタッフのスキルアップを図る一方で、自店舗全体の雰囲気作りも売上をアップさせる要素なのです。
6 クレーム対応を徹底する
本来はクレームはない方がよいのですが、しかし接客業である以上、そしてお客様にはさまざまな感性を持っている人がいる以上、クレームはなくなりません。したがって、大切な点は、クレームが起こった時にどのように対処するか、という点です。
具体的には以下の点をスタッフに徹底しましょう。
- クレームが起こった時の初期対応を徹底し、2次クレームを起こさない
- 小さなクレームでもスタッフ内で済まさせず必ず店長に報告させる。報告を受けた店長は必ずテーブルに自ら行って謝罪する
- クレーム対応のマニュアルを作ってスタッフに研修する
- クレーム内容をミーティングや朝礼で共有し、同じことが起こらない方策をスタッフに考えさせる
- 自店舗全体のシステムに原因のあるクレームは、それが再発しないように仕組み自体を改める
7 アンケートハガキなどを設置して直接意見をもらう
接客業を成功させ、売上をアップさせるには、経営側やスタッフ側から見た自店舗の問題点だけではなく、お客様から見た問題点、あるいは逆に良い点を把握することも重要です。
しかしよほどのことがない限り、お客様はクレームも逆にお褒めの言葉も発しませんから、問題点もよかった点も、隠されたままになってしまう場合がほとんどです。
そのような問題点やよかった点を見過ごすことがないようにするためには、アンケートハガキなどをテーブルに用意して、お客様から直接意見をもらうようにしましょう。ただし、これもよほどのことがない限り、アンケートなどは書いてくれませんから、アンケートを書いた人の中から毎月抽選で無料食事券をプレゼントする、などのインセンティブを用意することも重要です。
まとめ
いかがですか。
自分の飲食店の売上が上がらない理由、そしてその問題点の対策がわかっていただけたでしょうか。ぜひ以上を参考に、トータルで顧客満足度のアップを図り、売上の上がり続ける繁盛店を目指しましょう。