【目次】
・接客業(飲食店)の心得はQSC・接客マニュアルのメリットと注意点
・接客マニュアルの作成ポイント
・接客マナーマニュアルの例を紹介
・接客マナーの注意点についても記載を
・感じの良い接客を実現するために大切なことは?
・マニュアルを活用しながらプラスアルファーの接客を
・待機時間も接客を意識し好印象の店舗に
・まとめ
接客マニュアルで集客力アップ!スタッフに共有したい接客の心得
飲食店を繁盛させるために必要なことはいろいろとありますが、その上位に来るのが接客です。
中には不愛想な店主が人気の店もありますが、それは例外中の例外で、ほとんどのお客さまは自分を客として尊重してもらいたいと思っています。その尊重の「形」がよい接客なのです。
しかし接客と言っても漠然としていますので、ここでは接客の心得とでもいうべき基本について具体的に解説します。
接客業(飲食店)の心得はQSC
冒頭でも書いたように、繁盛店になるためのポイントはいろいろとありますが、よく言われるのはQSCという用語です。
これはQが「Quality」つまり料理の「質」、Sが「Service」つまり接客、Cが「Cleanliness」つまり店舗の衛生面のことです。
このように接客は飲食店が繁盛する3大要素の1つなのです。
接客マニュアルのメリットと注意点
接客の質を上げるためにはどうしたらよいでしょうか。
まずおすすめしたいのは接客マニュアルを作成することです。接客マニュアルという書類を作成することにアレルギーを持っている人もいるかもしれませんが、この作成には多くの効用があるのです。
一方で気を付けたい点(デメリット)もありますので、メリット・デメリットを理解し、接客マニュアルを作成しましょう。
〈接客マニュアルのメリット〉
- 接客業の経験がなくても、一定レベルのクオリティの接客ができるようになる
- スタッフによって接客レベルの差が出ない
- 店長の指導が効率化できる
- 先輩スタッフでも教えられる
- スタッフが自習できる
ただし一方では接客マニュアルによって失われるものもあります。
それは以下のものです。
〈接客マニュアルのデメリット〉
- スタッフ1人1人の個性が接客に反映されること
- 新規客でもヘビーなリピート客でも、誰に対しても同じ接客であるために、ぬくもりに乏しくなる場合もあること
- スタッフが自分で考えなくなること
この欠点を防ぐためには、マニュアルに「何を」するのか、だけではなく「どうして」それをするのか、という点も併せて載せ、それをしっかり教育することです。
そうすれば、スタッフはその「どうして」に沿って自分の応用を利かせて接客することが可能になり、上記の欠点を補えます。
接客マニュアルの作成ポイント
接客マニュアルは、スタッフが店舗でどのような接客をすべきかの指針となるものです。
お客さまの来店からお見送りまでの一連の流れに対して、どのように接客するべきか、マニュアルで示す必要があります。
接客マニュアルにどのような内容を記載すべきか、作成のポイントを紹介しましょう。
接客マニュアルに記載すべき内容
接客マニュアルは4つの項目に分けられます。
1) 業務フロー
業務全体の流れが分かるようにするマニュアル。
お店の方向性や独自ルールを共通化する目的もあります。
役割分担、開店・閉店のフロー、清掃業務なども記載しましょう。
2)接客マナー
接客に関するマナーを学ぶためのマニュアルです。
3) トラブルへの対応
起こりうるトラブルに対して、どのように対応すべきかを示すマニュアル。
クレーム対応、予約トラブル、食材不足など、想定されるトラブルについてまとめておきましょう。
4) キッチン業務
キッチン業務のマニュアルはレシピではありません。
調理器具の扱いやゴミ出しルールをまとめるマニュアルです。
キッチン業務に関わらないスタッフも、掃除・ゴミ出しのルールなどは知っておくべきなので、マニュアル化しておくと便利です。
ここでは接客シーン別の例も併せてご紹介しますから、自店舗でマニュアルを作成する時の参考にしてください。
接客マナーマニュアルの例を紹介
マニュアルの中でも大きな比重を占める「接客マナー」のマニュアルについて、具体例を紹介します。 ぜひ参考にしてください。
お出迎え
お客さまのお出迎えの際には、以下のようなトークをします。
「いらっしゃいませ! 本日はご来店ありがとうございます! お客さま、何名様ですか?」
「お煙草はお吸いになりますか?」
「はい!ではご案内いたします!(笑顔で)こちらへどうぞ!」
オーダーテイク
オーダーテイクの時には以下のようなトークを入れましょう。
「お待たせいたしました!」
「ご注文はお決まりでしょうか?」または「お待たせいたしました。お伺いいたします」
「それではお飲み物のご注文からお伺いします」または「お料理のご注文はお決まりでしょうか?」
(オーダー終了時)
「かしこまりました。それでは、ご注文を復唱いたします」
※オーダーミスがないように必ず復唱します。
キャリー
料理をテーブルに運んだ際にはこのようにトークします。
「失礼いたします。お待たせいたしました。アンチョビパスタ2人前とミックスサラダでございます」
「お会計の伝票、こちらに失礼します」
「ごゆっくりどうぞ」
【キャリー時の注意点】
皿やグラスを運ぶ時には、お客さまの口をつける部分には触れないということです。
具体的にはグラスの場合は、半分~3分の1より下を持つようにします。
さらに料理を置く際には以下の点に注意します。
- 個人のものは個人の前に置く
- お客さまの前を横切って置く時には「前を失礼します」と断る
- 奥の席に置くのが遠くて危ない場合は、手前に置いて「こちらに置かせていただきます」と言う
会計
会計は以下のような流れで行います。
- お客さまから伝票を両手で受け取る
- ウェイティングさせた、料理提供が遅かった、料理が品切れだった、など顧客不満足要因があった場合は、お会計時に改めてお詫びをする
- 受け取りながら、笑顔で「ありがとうございます。伝票をいただきます」とお客さまの目を見て伝える
- 「お会計は5800円です」と大きな声でハキハキと伝える
- お客さまからいただくお金を両手で受け取る
- いただいたお金がいくらあるかを確認して「6,000円お預かりいたします」と確認する。ちょうどの場合は「5,800円、ちょうどいただきます」と言う
- いただいたお金はすぐにレジにしまわないで、必ずトレーに一時保管する
- ※お客さまからお金をお預かりして、すぐレジにしまうと、「さっき1万円渡したよね?」と言われた時にわからなくなってしまう危険性があるため。
- お札をお渡しする時には「お先に2,000円のお返しです」などと伝えて、1枚ずつお客さまの前で数える
- お渡しするときには、お札の向きをそろえて、きれいに整える
- 小銭は手のひらを広げて「200円のお返しです」などと伝えてから渡す
お見送り
お見送りの際には、玄関まで行ってドアを開け、さら外に出て深くお辞儀をします。
接客マナーの注意点についても記載を
接客にはNGの言葉遣い、ふるまいがあります。
これを避けるだけでも接客の質は上がりますので、マニュアルに記載しましょう。
言葉使い
敬語を正しく使う
男の人/女の人 | 男性の方/女性の方 |
お客/お客さん | お客さま |
年取った人 | ご年配の方 |
子供 | お子様 |
旦那さん/奥さん | 旦那様/奥様 |
一人 | おひとり様 |
一緒の人 | お連れ様 |
僕/わたし/自分 | わたくし |
我々/私たち | わたくしども/当店 |
注文は決まりましたか | ご注文はお決まりでいらっしゃいますか |
ちょっと待ってください | 少々お待ちくださいませ |
お待ちどうさま | お待たせいたしました |
今持っていきます | ただ今お持ちいたします |
ごめんなさい/すみません | 申し訳ございません/失礼いたしました/恐れ入ります |
いくつですか/何人ですか | いくつになさいますか/何名様でしょうか |
案内します | ご案内いたします |
この席でよいですか | こちらの席でよろしいでしょうか |
今満席です | ただ今満席でございます |
トイレはまっすぐ行って右です | まっすぐ行かれて右手にございます |
すぐ取り替えます | 申し訳ございません、ただ今お取替えいたします |
こっちの間違いでした | 申し訳ございません。わたくしどもの手違いでした |
味はどうですか | お味はいかがですか |
下げてよいですか | お済みでしたらお下げしてよろしいでしょうか |
そうです/そうします | さようでございます/そうさせていただきます |
わかりました | かしこまりました |
知っています | 存じております |
その通りです | おっしゃる通りです |
誰ですか | どちらさまでしょうか |
これですね | こちらでございますね |
私が聞きます | 私が(かわりに)お伺いいたします |
こっちでやります | わたくしどもでいたします |
できません | わたしどもではいたしかねます |
間違った言い回しをしない
「こちらエビピラフになります」→「こちらエビピラフです」
「でよろしかったでしょうか」→「でよろしいでしょうか」
「ご注文の方は以上でよろしいでしょうか」→「ご注文は以上でよろしいでしょうか」
「すいません」→「すみません」または「申し訳ありません」
「鶏唐です」→「鶏の唐揚げです」(料理名を略さない)
「少々お待ちいただく形となるのですが、よろしいでしょうか」→「少々お待ちいただいてよろしいでしょうか」
(会計時)「1,000円からお預かりします」→「1,000円、お預かりします」
タメ口を使わない
いくらお客さまと親しくなっても友達に話すような「タメ口」はNGです。
これらはただの言葉の問題だけではありません。
先ほど書いたようにお客さまは、意識しているかどうかは別にして「自分をお客として尊重してほしい」と思っています。
そのお客さま尊重の形を「正しい言葉遣い」で示す、というのがよい接客をする本当の目的です。
それがお客さまの気持ちに沿って行動するということなのです。
笑顔がないのはNG
お客さまを店として歓迎している、というメッセージを示すには笑顔が必須です。
逆に笑顔がないということは「あなたを当店では歓迎していない」という無言のメッセージにとらえられ、お客さまを非常に不愉快にしてしまうので気をつけましょう。
ふてぶてしい顔つきや態度はNG
ふてぶてしい顔つきや態度もNGです。
しかしこれは自分ではそのつもりがないのに、人から見たらそのように感じられてしまうスタッフもいるでしょう。
そういう人には店長や先輩からズバッと指摘して自覚させ、直させることが必要です。
清潔感がない
QSCのCは店舗の衛生面もありますが、スタッフ自身の衛生面も含めてのことです。 不潔感は衛生的に問題であると同時に、お客さまを不愉快にさせるという意味で、接客の問題でもあります。 清潔感を持つためには以下をマニュアルに盛り込みましょう。
清潔感の基本
清潔感演出の基本は以下がポイントです。
- 髪の毛は帽子に入れる
- 髪に触るのは禁止
- 爪を切る
- 香水をつけない
衛生管理のために手洗いを励行
衛生を維持するために、以下のタイミングでの手洗いを励行させましょう。
- シフトインする前(エプロンなどは着けた後)
- 外から厨房に入った時
- 顔や髪の毛に触れた時(無意識のうちに触ることがある)
- ハンカチやティッシュを使った後
- 金銭を取り扱った後
- トイレ使用後
- 汚れ物(ゴミ)に触った後やクリンリネス作業後
- 生肉や野菜に触った後
- 担当するエリアが変わる時(キッチンとホール)
- 1時間ごと
※忘れがちだが、タイマーをセットするなどして必ず実行させる。ホール、キッチンとも同様。
だらしない態度、失礼な態度をお客さまに見せない
さらに以下のような態度もお客さまを不快にします。
それだけではなく、店全体の雰囲気を悪くします。
- 壁に寄りかかって待機する
- 腕組み・手をうしろに組む
- ポケットに手をいれる
- 人差し指で指す
- ※正しくは、手の平で示すようにします
- お客さまの批判をする・お客さまを見てクスクス笑う
- 私語
お客さまの言葉を言い直す
お客さまが間違った言い方をした場合に、それを指摘することはNGです。
指摘はしなくても、正しい言い方で言い直すなども含めてやめましょう。
たとえば「的矢湾(まとやわん)」を「てきやわん」と間違えられた場合、「この『まとやわん』の牡蠣は」と言い直してしまうことなどです。
お客さまを優先しないのはNG
お客さまを優先しないのもNGです。
たとえば狭い通路でお客さまとすれ違う場合は、必ず道を譲ります。
感じの良い接客を実現するために大切なことは?
先ほどから何度も繰り返しているように、すべてのお客さまは意識的、無意識的に自分をお客として尊重されたいと思っています。
接客とは「そのお客さまを尊重しているという」言葉・行動での表現なのです。
それができていない場合は、QSCのQがよくても、つまりおいしい料理を提供していても、Sのサービスが悪いので、顧客満足度は下がり、結果的にリピート率は下がってしまいます。
言い換えれば接客がお店の顔であり、表情なのです。
マニュアルにも、接客で大切してほしいポイントをまとめておくと、スタッフの周知につながります。
笑顔で目を見て挨拶
お客さまを尊重し歓迎している表現として何より重要なことは、笑顔と目を見て挨拶することです。
なぜなら、人間は言葉よりも態度からメッセージを受け取ることが、印象全体の90%以上あるからです。
しかし「笑顔が大切」と言っても、意外に難しいのが現実です。
これを全スタッフに実行させるには、店長が口酸っぱく言うだけではだめです。
なぜなら働き場所としての店の雰囲気が良くなければ、笑顔は出ないからです。
笑顔のためにも、スタッフの待遇や労働環境を良くしたり、スタッフをほめたり、定期的に面接してコミュニケーションを取ることなども大切です。
また、スタッフに意識させるために、デシャップからホールに出る場所に鏡を取り付けて、出る前に必ず笑顔が出ているかどうか確認させることも方法の1つです。
管理者はスタッフを慌てさせない、怒らない
スタッフはストレスを感じると、当然ほころびが出ます。
つまり慌てていたり、怒られた直後などは、接客用語をきちんと言えなくなったり、お客さまに失礼な態度を取ったりしてしまうのです。当然笑顔も出ません。
リーダーや店長・経営者はそうならないように、スタッフを追い詰めないことが大切です。
具体的には、スタッフを急かして慌てさせたり、怒ったりすることは慎みましょう。
怒るのではなく、正しく指導する・叱ることを意識してください。
マニュアルを活用しながらプラスアルファーの接客を
マニュアルが浸透して来たら、あるいはそのスタッフがマニュアルを一通り身に着けたら、スタッフ自身の考えや工夫で、マニュアルにプラスアルファーをして接客をさせることも推奨しましょう。 その際には、たとえば以下のような例を挙げて説明するとよいでしょう。
お出迎えの時
明るく元気な「いらっしゃいませ!」の第一声は当然ですが、状況に応じて、以下の言葉を付け加えましょう。
お客さまが仕事帰りの会社員に見えたら、「お仕事お疲れ様です!」
当日の天候を挨拶に交えて「雨の中ありがとうございます」「寒い中ご来店いただきありがとうございます!」と感謝をより伝える
顔見知りの、何度かご来店いただいているお客さまなら、「なんだか今日はお越しいただけるような気がしていたんです!」などと歓迎の気持ちを伝える
新規オーダーの時
お客さまが注文に迷っている場合は、一緒に「メニュー選びのお手伝い」をしてあげましょう。
たとえば以下のようなことです。
「迷われているようでしたら、バラエティセットであれば、一通り美味しいところを食べられるので、いいと思います」
「お鍋で迷われているようでしたら、私は、海鮮パスタがおすすめです。いろいろな魚介類が入っていてとても美味しいんですよ」
キャリーの時に
料理の「売り」を簡単に付け加えるようにしましょう。
その一言で、その料理が一層美味しく味わえます。
たとえば以下のような言葉です。
「鳥刺しに入っている部位は、もも、せせり、こころ、つくね、ささみです。お味を比べてみてくださいね」
トイレの位置を聞かれた時
「ここをまっすぐ行った右手です」というようなご案内をせずに、できればトイレの前までご案内して、「こちらでございます」と言いましょう。
待機時間も接客を意識し好印象の店舗に
実際にお客さまと対面していない待機の時間も「接客の一部」だと考えましょう。
教育が難しい場合は、この点もマニュアルに記載しておくと、スタッフの理解も深まります。
忙しくなくても仕事を見つけて、見せる接客を
キャリー・オーダーテイク・バッシングなどの仕事がない場合でも、ぼんやり待機せずに、店に貼ってあるポスターが歪んでいたら貼り直すなどの仕事を見つけて行いましょう。
そのように「自店舗を大切にしている」という姿勢を見せることは、お客さまに「よい店で食事をしている」と感じさせ、顧客満足度を向上させることにつながります。
意識は常にお客さまへ
意識は常にお客さまへ向けましょう。
お客さまは、スタッフに声をかけようかどうしようか迷っている時がかなりの頻度であります。
それはお客さまの態度で分かります。
そういう素振りを見逃さず、そのような気配があったら「ご注文をお伺いしましょうか?」「何かお気づきになったことがありますか?」と声をかけましょう。
それはお客さまが、声をかけるストレスから解放されると同時に「お客さまを大切に気を配っている」という姿勢を示すことにもなります。
アイコンタクトがとれるよう、背を向けない
そのためには、お客さまからのアイコンタクトを逃さないように、常に客席には背を胸ないようにしていることが重要です。
話しかけやすい雰囲気を
お客さまから声をかけやすい、話しかけやすい雰囲気も出しましょう。
そのためには厳しい顔をしないで、お客さまと対面していない場合でも機嫌良さそうに、微笑んでいることが大切です。
まとめ
いかがですか。
今回は、接客業(飲食店)のマニュアルについて、また接客の心得について詳しく解説をしました。
具体的な接客の心得とポイントはお分かりいただけたでしょうか。
以上のことをすべて店長自ら実行し、そのうえでスタッフに一緒に実践させれば、自店舗のQSCのSは格段に向上します。
ただし、新人スタッフが一度に多くのことを学ぶのは大変ですし、教育するスタッフにも負担がかかります。
そのような時に役立つのがマニュアルです。
マニュアルがあれば、大切なポイントを各自で確認することができます。 スタッフの接客力が強化されることによって顧客満足度は劇的にアップしますから、リピート率も上がり、良い口コミも生まれ、必ず集客数はアップするでしょう。 これが繁盛店誕生のポイントですので、ぜひ実行しましょう。