飲食店の内見で見るべきポイント7つを紹介
【目次】
・内見の流れと準備するもの・内見ポイント① インフラ設備・容量
・内見ポイント② キッチン周りの設備
・内見ポイント③ 厨房機器の状態
・内見ポイント④ 清掃の有無や引き渡しの状態
・内見ポイント⑤ 契約内容
・内見ポイント⑥ 前テナントの情報
・内見ポイント⑦ 立地の確認
・まとめ
飲食店が成功するかどうかの多くの部分を占めるのが、実は立地と物件です。
仮に料理がほどほどでも、人通りの多い好立地にある飲食店は、だいたいの場合成功します。逆にどのようにおいしい料理を出しても、それが消費者に認知されず、かつ行くのにも不便な場所の場合、よほどのことが無い限り成功はおぼつきません。
その物件が成功する条件を持っているかどうかを確認するのが「内見」です。ですから、内見は非常に重要なのです。
そこで今回は、内見時に何を見れば良いのかというポイント7つをご紹介します。
ぜひ内見チェックリストとして、ご活用ください。
内見の流れと準備するもの
飲食店の店舗を探す場合、不動産店やネットの情報から、気になった店舗を絞り込みますよね。そして気になる店舗については内見を申し込み、自分の目で確認する流れになります。
ほとんどの場合、内見には不動産会社の担当者が立ち会いますので、物件についての説明を聞きながら、店内を確認することができます。お店が退去する前(営業中)の場合、その店のオーナーや店長が立ち会うことも多いです。
内見の時間は、長くても1回につき30分程度。回数は、契約するまでに2~3回程度が一般的となります。不動産会社やお店の都合もあるため、内見の回数が限られる可能性も少なくありません。
限られた内見で契約の判断をすることになりますので、チェックすべき点を押さえてから内見に臨みましょう。内見は、店舗に関する情報を不動産会社や今の借主から直接聞くことができる、貴重な機会です。何を聞きたいのか、何をチェックするべきなのか、事前準備も大切です。
内見に持っていくべきアイテム
内見は何度も気軽に行くことはできません。他の候補と比較できるように、情報をしっかり記録しておきましょう。
・筆記用具
間取りを書き取ったり、気になった点のメモを取ったりする際に便利です。
・カメラ(スマートフォン)
写真を撮っておけば、あとから見返すことが可能なので、他の物件との比較もしやすくなります。いろんな角度からたくさん写真を撮っておきましょう。
店内であれば、客席・厨房・厨房設備・グリストラップ・トイレ・エアコン・収納スペース・小物など。店外側については、外観のほかダクト排気口・エアコン室外機・給湯器なども可能であれば撮っておきましょう。
・メジャー
店内の寸法を測り、見取り図にメモしておくことで、業者とプランニングする時に役立ちます。
居抜き物件に自分たちで用意した機器を導入する場合は、寸法を測っておかないと、設置できるかの判断が難しくなります。
メジャーを忘れずに持っていきましょう。
・懐中電灯
スケルトンの物件などは、照明が無いこともあります。
スマートフォンのライトで照らすこともできますが、物件によっては懐中電灯が無いと不便なこともあるので、持っていた方が安心です。
内見ポイント① インフラ設備・容量
まず内見時に1番で確認するべきは、インフラ設備です。実は工事に1番コストがかかるのが、電気・ガス・水道などのインフラ設備などだからです。
たとえば中華料理店のような重飲食の場合は、使う火力や電力が大きいので、設備の新設や容量アップの工事が必要になる場合もあり、それだけで200~300万円の費用がかかります。
そこでお金をかけざるを得ないと、本当にしたかった内装が実現できなかったり、融資を増やす必要が出てきたりします。
そうならないようにするためには、内見時にインフラ設備の容量を確認し、工事が必要かどうかを判断しておく必要があるのです。
ちなみにガスの容量の目安ですが、カフェやバーなどの軽飲食は3~6号、中華料理店や焼き肉店などの重飲食は10号以上です。
目的に合ったガスの容量になっているか、見落とさないようにしましょう。
内見ポイント② キッチン周りの設備
重飲食の場合、キッチン周りの状態もその物件が適当かどうかを判断する基準になります。特にしっかり見ておきたい部分は、グリーストラップ・厨房防水・ダクトです。
各設備のチェックポイントを把握し、内見時に忘れずに確認をしてください。
グリーストラップ
グリーストラップは下水道に直接油や食物の脂肪、残飯や野菜くずなどを流出させない設備です。
特に重飲食の場合は、設備がしっかりしているかどうかを見ておかないと、内装時に工事が必要な場合、思いがけない費用がかかってしまいます。
そのチェックポイントは以下の通りです。
- グリーストラップ槽の構造(1槽式~4槽式)
- 槽内寸
- 槽外寸
- グリーストラップ設置場所(厨房内、厨房外、屋内、屋外)
- 残飯受けカゴ(1槽目、2層目、3層目)
- 仕切り板(1~2槽目、2~3層目、3~4層目)
- グリーストラップ使用水量(1日換算)
- グリーストラップ使用(流入)時間
- 残飯受けカゴ仕様(メッシュ穴開き、密閉)
- グリーストラップ蓋仕様(穴開き、密閉)
- 清掃周期(年あたり回数)
- 酵素、薬剤処理(生物またはバイオ処理、オゾン処理、汲み取り機処理)
- 使用酵素または薬剤
- 使用年数 ・装置位置(グリーストラップから何mか)
厨房防水
厨房内の防水にも注意しましょう。
厨房内は掃除をする上でも水を流しますし、調理上、水が流れることもあります。その時に防水が甘いと、階下に水が漏れて賠償問題に発展するおそれもあります。
また店舗がオープンしたあとで防水修理をするのは現実的に不可能です。
厨房防水の状態については以下が仕様になりますので、どれに該当しているかを確認しましょう。
- ウレタン系塗布防水
- ゴム、塩ビシート防水
- アスファルト防水
- FRP(繊維強化プラスチック)防水
また可能なら、1度床に水を張り、水漏れが無いかもチェックしましょう。
ダクト
ダクトとは、天井裏や壁面内部、屋上などに管を這わせて排気する空調設備です。用途としては、まずホールやキッチンのエアコンのダクトがあります。
さらに、室内に溜まった汚れた空気を室外に出す換気ダクトがあります。
特に状態を確認するべきは、調理時の油や煙などを廃棄する厨房排気ダクトがどうなっているかです。重飲食の場合は必ず確認しましょう。
この中で特に確認すべき厨房排気ダクトについては、以下のような構造になっていますから、それぞれの部分がどういう状況か見るようにしましょう。
グリスフィルター
グリスフィルターは、調理で出た、油を含んだ煙のうちの油分だけを除去する設備です。目詰まりが無いか確認しましょう。
防火シャッター
グリスフィルターの中には防火シャッターがあるはずです。
厨房排気ダクトは必要ですが、万が一火事になった場合は、火にとって都合の良い煙突になってしまいます。
その際に類焼を防ぐために防火シャッターが必要なのです。これが油まみれになってないか確認しましょう。
排気ファンとファンベルト
排気ファンも厨房排気ダクトの1番の出口についていて、排気を効率的に行うものです。
このファンが油まみれになっていないか、ファンベルトが緩んでいないかを確認しましょう。基本的にこの2つは屋外にあります。
内見ポイント③ 厨房機器の状態
インフラの状態を確認したら、次に見るべきは厨房機器の状態です。
具体的には「必要な機器は揃っているのか」「故障していないか」「部品は揃っているか」という点を確認します。特に「耐久年数に対して、あと何年使用できるのか」という点を見ておくべきです。
使用年数が残りわずかになっている場合、入居してすぐに交換となると多大な費用がかかってしまいますから要注意です。
また居抜き物件などで、厨房機器のリースを引き継ぐ場合は、そのリース契約の内容も確認しておくことが大切です。契約が引き継げないようになっていると、前の店舗の退店時にリース会社に引き上げられてしまいます。
譲渡されるはずの機器がなくなってしまう、というトラブルもよくあるのです。
またリースに残債がどれだけあり、それは誰が支払うのかもしっかり確認し、それらを前オーナーと共同で「譲渡品リスト」として作成しておきましょう。
内見ポイント④ 清掃の有無や引き渡しの状態
物件がどのような状態で引き渡されるのか、確認しておきましょう。
居抜き物件の中には、条件によっては散らかった状態で引き渡され、清掃が必要になる場合もあります。借りる側が提案しなければ、そのままの状態で引き渡されることも多いので、状態がひどい場合は、清掃業者利用の交渉を検討しましょう。
清掃業者の利用については、家主や管理会社の判断にゆだねられます。そのため、清掃後のきれいな状態で引き渡してもらえることもあれば、現状での引き渡しになることもあります。
また、折衷案として、清掃費用を入居者が負担する代わり、家主や管理会社がほかの部分で減額サービスをする(家賃の減額など)というパターンもあるので、提案してみても良いでしょう。
内見ポイント⑤ 契約内容
内見時前にもできることですが、物件の賃貸契約の内容も、決定前にしっかり確認することが重要です。そのポイントは以下の通りです。
保証金の返還
保証金をいくら入れるのか、それは退店時にいくら戻ってくるのか、いつ振り込まれるのか、という点の確認が必要です。
原状回復の範囲
また、これに合わせて、保証金を充当して工事する「原状回復」の範囲がどこまでなのかも確認しましょう。
これは内見の時に、オーナーと一緒に内装のどの部分が回復対象かを1つ1つ確認して回ることが望ましいです。
正式退去をするまでの期間
さらに退去する場合に、閉店してから原状回復工事を行って正式退去をするまでの期間を契約上どれだけ取っているのかも確認対象です。
この期間が妥当でないと、工事が終わっていないのに期限が来てペナルティが発生したり、逆に余裕がありすぎて無駄な家賃を払うことになったりする可能性があります。
内見ポイント⑥ 前テナントの情報
これは内見時ではなくても必ず確認しておくべきものですが、前のテナントがある場合、そのテナントがなぜ閉店し、退店したのかという理由です。
これを知らないと、良い立地だと思っていたのに意外に落とし穴があったり、問題あるオーナーでテナントとトラブルがあったり、あるいは商圏や立地そのものが実は思った以上に悪かったり、ということがあるからです。
ただしこれらのネガティブ情報は、オーナーも不動産仲介会社も正確に教えてくれない場合の方が多いです。それをカバーするには、近隣の飲食店に客として行って、情報を仕入れることです。
同業者であれば見るポイントも的確ですし、同業同士の噂話で流れてくる真実もあります。
自分に損得が無ければ、意外と本当のことを教えてくれるものなので、しっかりリサーチしましょう。
内見ポイント⑦ 立地の確認
現地に行かなければ絶対に分からないことが、現実的なその物件の立地の良し悪しや商圏です。
これについては、自分の足で物件を中心に半径1km以内を歩いて確かめましょう。
立地と商圏について
まず1つは、その物件がどのような商圏を抱えた立地なのかということです。これさえ良ければ、仮に2階などの空中店舗でも、十分に勝算があると考えられる場合もあります。
ですので、以下について足で確かめましょう。
- 店舗周辺の人口は多いのか。近隣は住宅街か。住民の経済状況はどのように見えるか。
- 最寄りの駅は歩いて近いか。その駅は大きいか。朝夕、どの程度の乗降客があるか。急行は停まるか。
- 店の前は人通りが多いか。多い時間帯は何時ころか。ランチタイム、ディナータイムの人通りはどうか。
- 遠くからでもその物件は視認できるか。間に邪魔になる夾雑物(きょうざつぶつ)は無いか。袖看板はつけられるか。地面にA看板は置ける余裕があるか。
- 近隣に大型商業施設、大学、観光地、オフィス街、大きな工場など、多くの人が集まる場所があるか。
- それら施設には食堂があるか。ランチは外で食べているか、施設内で食べているか。
- 駐車場は運転者にとって分かりやすく、車を入れやすいか。反対方向からも入れるか。
- 駐車場マークは100m先からも視認できるか。
- 競合店が近隣に無いか。
※競合は同業ではなくても、ランチ需要を狙うのであれば弁当屋やコンビニが、ディナー需要の場合は居酒屋とファミレスが競合になるので、業種を超えて考える必要がある。
競合店について
競合になりそうな飲食店が見つかった場合は、その店に客として行ってみて、状況を把握することも重要です。
具体的には以下の点を確認しましょう。
- 店内の雰囲気はどうか。落ち着いているか、カジュアルか。
- 席数はいくつか。回転率は、ランチ、ディナーで何回転か。
- 従業員の接客態度は良いか。フレンドリー狙いか、慇懃(いんぎん)ねらいか。
- 接客マニュアルがありそうか。従業員教育はしっかりしているか。
- メニューは何種類あるか。中心価格帯はいくらか。
- 目玉料理は何か。ほかの来店客の多くが注文している料理はあるか。
- 注文してから料理が出てくるまでは何分かかるか。
- 料理はおいしいか。それほどでもないか。原価率はどの程度か。
- 店内ポスターや卓上POPなどの販売促進は行われているか。
- ショップカードはどういうものか。ポイント制などで顧客の囲い込みをしているか。
まとめ
いかがですか。
物件を選ぶ場合は、その家賃や広さだけで決められません。不動産情報に載らないけれど、実は非常に大切な部分な部分がたくさんあるからです。
それはほとんどの場合、現地で内見しないと分かりませんし、判断できません。ですから、今回ご紹介したポイントを中心にしっかり内見を行い、隠れた瑕疵(かし)のある物件、つまり欠点のある物件を掴まされないように注意しましょう。