自店舗を繁盛店にさせるための要素としては、料理や接客なども大きいですが、同様に立地も極めて重要な要素です。にもかかわらず、料理や接客は営業しながらいくらでもレベルアップできますが、立地はいったん出店したら簡単には変えられません。ですから立地に関しては出店前に念には念を入れて検討する必要があるのです。なおかつ、その立地がよい条件かどうかは、立地の種類によって全く変わります。そこでここではその立地の1つにロードサイドに焦点を当て、どのような立地であれば繁盛店になれる可能性があるのかを解説して行きます。
ロードサイドとは?
まずロードサイドの立地とはどのようなものなのでしょうか。
ロードサイト店舗とは
「ロードサイド」とは要は「道=ロード」に「面している=サイド」という意味です。ただどの店舗も基本は道に面しているでしょうからその中でもロードサイド店舗とは、幹線道路のような交通量の多い道路の沿線で、主に自動車による来店客をターゲットにした店舗形態を指します。
客層は
ロードサイド店舗の客層は2つに分類できます。1つは週末や夕方に夕食を食べにくるファミリー客や数人の団体客です。もう1つは日中にランチを食べに来店する、トラックの運転手や営業マンなどのビジネス客です。
このどちらの客層がメインターゲットになるかは、その店舗の立地と抱えている商圏、そして面している道路の性格によります。近隣に大規模ショッピングセンターやレジャー施設がある場合はその来店客が流れてくるため自店舗にはファミリー客が多くなります。一方で面している道路が工場と港などをつなぐ産業道路や幹線道路の場合はビジネス客が多くなります。
顧客単価と想定売上は
顧客単価は上記のどちらの客層がメインになるかによって変わります。ディナー主体であれば、おおむね2,000~3,000円ですし、ランチ主体なら700円前後です。
これの顧客単価に以下の数字を当てはめると想定売上が計算できます。たとえばディナー中心の居酒屋系であれば
ホールの坪面積×1.5席×0.7(満席率)×1.0(回転率)×2,500円(顧客単価)=想定売上
になります。居酒屋よりももう少しゆったりした雰囲気になるレストランタイプの場合は、坪当たりのの席数の1.5席が1.2席程度になります。
物件の広さは
ロードサイド店舗は市街地よりも郊外にあるため、基本的には賃料が安いところが多いです。したがって、物件自体も広くなります。
またロードサイド店舗は上記のようにターゲットが自動者で来店する客層になりますから、建物以上に重要な点が駐車場の確保です。したがって、駐車場の面積も加わるため、物件面積はさらにかなり広くなります。おおむね平均すると、全体で200~300坪程度でしょう。
ロードサイドに出店するには?
ではロードサイドに出店するために重要なポイントを解説して行きます。
商圏は車で半径15分以内
そのロードサイド店舗がどの程度の売上が見込めるのかは、抱えている商圏の購買力と人口にも左右されます。いくら店舗を大きくしても過疎地では集客は見込めません。その目安が、自店舗を中心に車で半径15分以内、つまり平均時速30km×15分=7.5kmの範囲です。したがって、その立地がよいかどうかは、半径7.5kmにどの程度の人口があり、その平均世帯年収がどの程度かを見る必要があります。
また競合店を考える時にその半径7.5kmの範囲にある店が対象になります。したがって出店する前に行う競合店調査はその半径7.5㎞の範囲にある、同じようなロードサイド店舗を対象にしましょう。
ロードサイド出店に適した立地は?
ロードサイド店舗の出店場所として適しているかどうかを判断するには以下のポイントも重要です。
視認性
自動車を運転していると、店舗を見つけてその駐車場に自動車を入れるまでにはタイムラグがあります。ですから遠くから見てその店舗が確認できる視認性がよくなくては集客できません。その視認性を高めるためにロードサイド店舗がしているのが、高さ5~10mのポール看板の設置です。このポール看板が100m離れたところから見えなければ、ほかの工夫もする必要があります。
交差点と物件の位置関係
交差点のすぐ近くの立地の場合は、1つはドライバーが対向車や右左折車に注意しているため自店舗を確認してもらえないことと、2つ目は渋滞するため店から出る時に苦労しそうなので来店を躊躇してしまう、という理由から集客が悪くなります。最低でも、交差点から2~3軒は離れていることが必要です。
中央分離帯の有無
中央分離帯がある道路に面しているロードサイド店舗では、基本的に接地している道路からしか集客できません。したがって見た目の交通量の半分しかターゲットにならない、ということです。それでも十分な集客が見込めるほど交通量があるのかどうかを見極める必要があります。
1番よいのは交通量が多くて中央分離帯のない幹線道路や生活道路に面していることです。
商圏が大きい
先ほど書いたように、半径7.5㎞の範囲に人口が多く、かつ世帯年収がほどほどあるという立地かどうかも重要なポイントです。ある起点を中心にしたエリアの平均の世帯年収は、専用のデータベースがなければわかりませんので、インターネットなどでそのようなサービスをしてくれる会社を探しましょう。
駐車場が広くとれる
ロードサイド店舗の売上と直結する要素は、併設している駐車場の台数です。いくら立地がよくても、駐車場台数が少なければ来店客は増えませんから売上は上がりません。では何台分の駐車場の確保が必要かというと、ターゲット、業態、顧客単価などにもよるので一概には言えませんが、一般的には最低でも20台分、できれば30台分は確保したいところです。
敷地
次にロードサイド店舗の立地を検討する上で考えるべきは、その敷地の大きさです。これをどのように考えていくのかを解説しましょう。
敷地と建坪の関係はどう計算する?
まずあるロードサイド店舗の物件があったとして、その場合には3つの「面積」を見る必要があります。
敷地面積
「土地面積」とも呼ばれます。真上から土地を見たときの面積です。斜面の土地の敷地面積は実際よりも小さくなります。
建築面積
建築面積とは、建物を真上から見た時の、その建物の面積のことです。2階建ての店舗の場合は、1階の面積になります。
またその物件の存在するエリアの区分によって「建ぺい率」というものがあります。これは敷地面積に対してどこまで建物の面積が占めてよいかの上限を示した数字です。したがって、
建築面積上限=土地面積×建ぺい率
になります。郊外の場合の建ぺい率は50~80%であることが多いので、2階建てにして1階を全て駐車場にするので敷地面積目一杯に建築しよう、ということはできません。
延床面積=建物面積
「延床面積」と「建物面積」は同じ内容です。これ建物の各階の「床面積」を合計した面積のことです。正確に言うと、外壁の中心部から計測するので、上で書いた建築面積とは変わってきます。
この延床面積にも「容積率」という規制があります。容積率とは、敷地面積に対して延床面積がどこまで占めてよいのかの基準値です。ですから、式としては
延床面積上限=敷地面積×容積率
になります。仮に容積率が200%、敷地面積が150坪であれば、延床面積は
150坪×200%=300坪
が上限だということになります。
店舗面積はどの程度が最適?駐車場との関係は
では仮に150坪の敷地があった場合、そのうちの何坪を店舗の建築面積とし、何坪を駐車場にしたらよいのでしょうか。一般的には、駐車場1台分につき通路の分も含めて7~9坪必要です。したがって、仮に20台分の駐車場を確保するためには、7坪×20台=140坪必要になります。これでは店舗が10坪しか取れませんから、全体の半分の75坪に抑えると75坪÷7坪=10.7で、約10台分しか駐車場は確保できないということです。
ところが居酒屋業態の場合、平均の目安で言うと駐車場台数1台当たり月商40万円だと言われています。したがって、駐車場が10台しか確保できない場合は、40万円×10台=400万円が月商ということになります。
すると、店舗面積は75坪ですから、坪売上は、400万円÷75坪=5.3万円にしかならず、採算ベースに乗りません。ではもう少し店舗を小さくして駐車場を15台にした方がよいか、その場合狭くなる店舗で40万円×15台=600万円の売上は可能か、ということを検討する必要が出て来ます。
いずれにしても、店舗面積と駐車場面積の関係は、このようにいくつもの変数が複雑に絡み合いますから、自分で何度も仮説を立てて計算をして最適な解を求めるしかありません。
坪単価や賃料の標準
ロードサイド店舗の物件賃料の坪単価は、市街地の坪単価よりもかなり安くなっていることが多いです。ただしこれもそのエリアや、立地の持つ潜在的な集約力によって賃料は上下します。ですから、候補となる物件が出たら、いろいろなサイトで、そのエリアの標準的な坪単価や賃料を調べて、候補物件が相場よりも高いか安いかを検討しましょう。
新たに建物を建設する場合の方式
またそもそもの話ですが、ロードサイド店舗の物件はすでに建物が建っていてそれを賃借する場合と、土地だけがあってそこに土地のオーナーに建物を建ててもらってから賃借する場合があります。後者の場合は、オーナー側に多額の建築費用が発生しますが、オーナーが大きな法人ではなく、資金力のない中小企業や個人の場合は建築費用の負担ができないことがよくあります。しかしその物件が良好な立地なのでどうしてもロードサイド店舗を建てたい、という時は、建築費用を肩代わりするか、自分で建築する必要が出てきます。その場合は以下の2つの方式になります。
リースバック方式
リースバック方式とは、土地のオーナーに「建設協力金」という名目で建築資金を預け、その資金を建築資金の一部に充当して建物を建築してもらう方法です。建物完成後、建設協力金はそのまま賃貸借契約の保証金になり、毎月オーナーが出店側に返済していくことになります。その際に実際に動くお金は、出店側からは物件の賃借料を毎月払うので、その相殺になります。この方式では、土地も建物もオーナーのものです。
事業用定期借地方式
土地のオーナーが出店側に土地だけ貸し、出店側で建物を建築する方式です。この方式では、土地だけがオーナーのもので、建物は出店側のものなので、退店時には出店側で更地に戻すことが原則です。
ロードサイドに適した飲食店舗はどんなものがある?
以上のようなロードサイト店舗には向いている業態とそうではない業態があります。向いている業態の条件は以下の通りです。
汎用性が高い
できれば1店舗でディナーもランチも営業できる業態の方がよいでしょう。そうすれば当然店の回転率がよくなりますから、売上が効率的に稼げます。そういう意味で汎用性が高い業態がよいのです。たとえば、回転すし、ラーメン、丼系などです。
幹線道路か生活道路か
接地している道路の性格によっても、どのような業態が適しているかが変わります。
接地している道路が、工場と港を結んだり、倉庫と高速道路を結んだりする幹線道路、産業道路の場合は、トラック運転手のランチ需要が大きいので、ラーメン、丼系、うどんなどのスピード飲食の業態が適しています。
接地している道路が住宅地と中心部を結んでいる生活道路の場合は、ファミリー客が多くなるので、ゆっくり飲食するディナー業態が適しています。たとえば、焼き肉、回転すし、焼き鳥などです。
集客するために必要なこと、ポイント
以上で解説したロードサイド店舗の立地の条件は以下のようにまとめられます。
- ポール看板は必須。100m離れたところから視認できるように
- 抱えている商圏、接地している道路の性格によって適している業態が変わる
- 駐車場の台数が売上を左右する
- 駐車場に入りやすいことが重要
ロードサイドに出店するメリット、デメリット
最後にロードサイド店舗を出店するメリットとデメリットを挙げておきましょう。
メリット
大規模売上
ロードサイド店舗は駐車場台数20台以上が基本なので、売上も月商800万円以上です。したがって大規模な売上を稼げるというメリットがあります。
利益率高い
賃料が安いので、市街地に比べて利益率が高くなる可能性があります。
簡単な調理オペレーションの店でOK
ランチ客を対象にしたスピード訴求の業態にすれば、調理のオペレーションが簡単に済みます。それは食材の種類が少なくなるので在庫効率が上がることと、スタッフ教育に費用と時間がかからないことというメリットをもたらします。デメリット
建設費が多額になる
既存の建物を借りるのであれば不要ですが、新たに建物を建てる場合は、規模が大きいので、建築費用が多額になります。土地オーナーに資金力があれば問題ありませんが、そうでなければ資金的に肩代わりをするか、自分で建てるしかありません。
また新たに建設する場合、水道やガスなどの配管が敷地下まで来ていないことが多いので、配管工事費用も必要です。さらにロードサイド店舗に必須のポール看板も1本200~300万円と高額です。
市街化調整区域は規制が多い
ロードサイド店舗の立地はほとんど郊外なので、市街化調整区域になっている場合が多いです。自治体にもよりますが、市街化調整区域に飲食店を建設する場合、排水処理の規制やごみ処理の規制など、規制が多いため、その対応にも費用がかかります。
大手の競合が多い
ロードサイド店舗には多額の投資が必要なので、出店するのは大手飲食チェーンであることが多いです。つまり強い競合が多いのです。仮に、競合の少ない立地に出店して繁盛すると、それを見た他社が競って出店してくるのでほぼ確実に競争が発生します。
ただし全く同じ業態ではなく、焼き肉店の隣に回転すしなどのように、ある程度違う業態の飲食店が集積したほうが、エリアとしての集客力が増すため、売上がアップする傾向もあります。
まとめ
いかがでしたか。
ロードサイド店舗は売上が大きくて魅力的ですが、多額の投資が必要です。その投資を回収するためにも繁盛店にする必要がありますが、それには立地がよくなければなりません。ですからロードサイド店舗の出店を検討する場合には、以上で解説した立地のポイントをよく確認して、好条件かどうかを判断しましょう。