飲食店を開業する時にはいろいろな資格を取得することが必要ですが、その中に防火管理者というものがあります。これはいったいどのような資格で、どうやって取得したらよいのでしょうか。そして飲食店を開業する上では防火管理者の資格の取得は必須なのでしょうか。ここではそれらの点について解説して行きます。
まずは消防署への必要な届出を確認しよう
まず防火管理者の資格の話の前に、消防署にはどのような届け出が必要なのかを確認します。その届け出は以下の3つです。
防火対象物使用開始届出書
1つは防火対象物使用開始届出書というものです。
防火対象物使用開始届出書とは
防火対象物使用開始届出書は消防署が、自分の管轄エリアに出店する、飲食店に限らず店舗や事業所を事前に把握して、それらの店舗や事業所が消防法で定められた必要な消防用設備を設置しているか、ということを確認するための書類です。
対象施設
この届け出の、飲食店における対象は
- キャバレー、カフェー、ナイトクラブ等の全て
- 待合、料理店、飲食店で延べ面積が 150 平方メートル以上のもの、または収容人員が 30 人以上のもの
になります。
届出を必要とするとき
この届け出をする必要があるタイミングは以下の通りです。
- 建物を新築したとき
- 建物を増改築したとき
- 事務所から飲食店に建物の用途やテナントを変更したとき
届け出方法
届け出方法は、店舗を開業する7 日前までに、この「防火対象物使用開始届出書」を管轄の消防署に届け出るというものです。
必要書類
その際の必要書類は以下の通りです。
- 防火対象物使用開始届出書
- 防火対象物概要表
- 案内図
- 平面図
- 詳細図
- 立面図
- 断面図
- 展開図
- 室内仕上表
- 建具表
防火対象物使用開始届出書の書式は以下からダウンロードできます。
届け出を怠った場合
この届け出をしないまま飲食店を開業し、それが露見した場合は、30万円以下の罰金または拘留という罰則があります。
防火対象物工事等計画届出書
もう1つ防火対象物工事等計画届出書というものです。
防火対象物工事等計画届出書とは
防火対象物工事等計画届出書とは飲食店や事業所の内装などを変更する時に届け出て、その工事によって内装が変わっても消防法で必要とされている設備が設置されているかを消防署で確認するためのものです。
対象施設
飲食店における対象施設は以下の通りです。
- キャバレー、カフェー、ナイトクラブそのほかこれらに類するもの
- 待合、料理店そのほかこれらに類するもの
- 一般的なすべての飲食店
届出を必要とするとき
この防火対象物工事等計画届出書の届け出が必要なタイミングは、店舗の修繕、模様替え、間仕切り変更などの内装変更を行う場合です。
届け出方法
防火対象物工事等計画届出書の届け出方法は、工事に着手する日の7日前までに、所轄の消防署に対して届け出るというものです。
必要書類
その届け出の際の必要書類は以下の通りです。
- 防火対象物工事等計画届出書
- 案内図
- 平面図
- 詳細図
- 立面図
- 断面図
- 展開図
- 室内仕上表
- 建具表
また防火対象物工事等計画届出書の書式は以下からダウンロードできます。
届け出を怠った場合
この届け出が必要にもかかわらずしなかった場合は、30万円以下の罰金または拘留の罰則があります。
火を使用する設備等の設置届
3つ目が火を使用する設備等の設置届です
火を使用する設備等の設置届とは
火を使用する設備等の設置届とはその名の通り、飲食店で火を使った調理を行う場合に、事前に消防署が書類によって必要な防火措置が講じてあるかを確認するためのものです。
対象施設
対象は以下の設備が設置されている施設です。
- 熱風炉
- 多量の可燃性ガス又は蒸気を発生する炉
- 前号に掲げるもののほか、据付面積2平方メートル以上の炉
- 厨房機器全体で使用するの電力の合計が350キロワット以上の場合
- 入力が70キロワット以上の温風暖房機
- ボイラーまたは入力70キロワット以上の給湯湯沸設備
届出を必要とするとき
この火を使用する設備等の設置届を提出するタイミングは、新規に飲食店を開業する時に上記の設備がある場合と、店舗改装によって上記設備を設置する場合です。
届け出方法
届け出る方法は、以上の設備の設置前に、所轄の消防署に届け出るものです。
必要書類
届け出時の必要書類は「火を使用する設備等の設置届」のみです。
この書式は以下からダウンロードできます。
届け出を怠った場合
この届け出が必要にもかかわらずしなかった場合は、30万円以下の罰金または拘留の罰則があります。
防火管理者とは
飲食店の開業あるいは改装時に届け出るものは以上ですが、次に開業時に必要だとされる防火管理者についての解説です。
防火管理者とは、多くの人が出入りする建物などで火災による被害が起きないように、事前に防火管理の消防計画を作成し、防火する上で必要な業務を行う責任者のことをいいます。
必要な場合と不要な場合がある
ただし防火管理者の資格は、飲食店を開業する場合に常に誰かが持っていなくてはならないというものではありません。
防火管理者はすべての飲食店で必要なわけではない
防火管理者は、飲食店だけではなく、不特定多数の人が出入りする施設の開業に必要となる資格です。
しかしその資格取得には要件があり、飲食店の場合は席数が30人以上ある比較的大きな店舗だけです。したがって、カウンターだけのラーメン店や自宅を改装して始めるカフェなどの場合は、防火管理者の資格は不要です。
自店舗の規模によって資格が異なる
そして30人以上の席数がある飲食店を開業する場合、その延床面積によって必要な資格が変わってきます。
それは延床面積が300平方メートル以上ある飲食店の場合は「甲種防火管理者」、300平方メートル未満の場合は「乙種防火管理者もしくは甲種防火管理者」が必要になるということです。
甲種防火管理者と乙種防火管理者では、資格取得のために受講する講習が変わります。しかしまだ店舗規模やレイアウトが決まっていないという場合は、300平方メートル以上でも未満でも対応可能な甲種防火管理者を取得しておいた方がベストです。
そして防火管理者は、営業開始までに所轄の消防署に届け出ることが義務付けられています。したがって開業日からさかのぼって間に合うように防火管理者の資格を取得しましょう。
防火管理者になれる条件とは
防火管理者には誰でも講習さえ受ければなれるものではありません。その資格取得には以下の通り条件があります。
1つめは、防火管理者の資格を取得する人が、防火管理が行える立場だということです。週に数時間しかシフトインしないアルバイトでは、そもそも店舗運営に対する責任を持っていませんし、当然防火管理は行えません。防火管理者は経営者や店長がなる必要はありませんが、自店舗に防火上問題がある場合には、経営者や店長にその措置を講じることを要求するのが役割です。したがって、最低でも常勤の従業員であることが必要なのです。
2つめが、防火管理をする上で必要な知識や技術を持っていることです。ただこれはそれほど難しいものではなく、防火管理者の講習を受ければ取得できるレベルのものです。ただし「市町村の消防職員で、管理的又は監督的な職に1年以上あった者」などはすでに知識があると判断されるので、受講は免除されます。自店舗にその対象者がいるような場合は防火管理者講習実施の機関に確認しましょう。
防火管理者講習の実施機関
防火管理講習の実施機関は、都道府県知事、市町村の消防署、日本防火防災協会のいずれかです。しかし実際にどの機関が講習を実施しているのかも、講習の受講方法も、あるいは受講費用もその地域によって異なります。ですから防火管理者の資格を取得する必要がある場合は、まず所轄の消防署に防火管理講習はどのように受ければよいのかを確認しましょう。
ただし、1度取得した防火管理者の資格は別の都道府県でも有効です。しかし一応念のため、そのような場合も所轄の消防署に相談してみましょう。
講習の申し込み方法
防火管理講習の申し込み方法は、受講申込用紙、申込先、申込方法、受講料などが地域によって異なりますから、まずは所轄の消防署に確認しましょう。受講資格は、中学校卒業程度以上で日本語の理解できる人です。
防火管理講習の日数と内容
防火管理講習は、乙種防火管理者の場合1日間、甲種防火管理者の場合は2日間の受講日数です。
内容は以下の通りです。
まず甲種防火管理講習は、2日間でおおむね10時間の講習です。内容は、防火管理の意義と制度、火気管理、施設と設備の維持管理、防火管理の訓練と教育方法、防火管理についての消防計画の立て方などです。
乙種防火管理講習は1日でおおむね5時間の講習です。ここで受講する内容は、防火に関する基礎的な知識です。
標準的な受講料
受講料は防火管理講習を実施する機関によって異なりますが、おおむね以下の金額が標準です。
- 甲種防火管理講習 7,500円
- 乙種防火管理講習 6,500円
- 甲種防火管理講習の再受講 7,500円
まとめ
いかがですか。
飲食店開業時に必要な防火管理者の資格の概要が理解できたでしょうか。中規模以上の飲食店を開業するためには、必須の資格になりますから、該当する規模の飲食店の開業を考えていて、自分が防火管理者の資格を持っていない場合は、常勤の従業員ですでに資格を取得している人がいないかを確認しましょう。そして該当者がいない場合は、上記のような内容の講習会を、自分または防火管理の責任が担える人が受講するようにしてください。